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ここはエディが思いついたAV機器に関する妄想・体験について語ったり、新製品についてコメントしたりするところです。

Blu-rayディスクレコーダー発売!

(2003.3.6)


かねてから発売が待ち望まれていたBlu-ray DiscレコーダーがSONYから発表された。
DVDの次代を担う、青色レーザーを用いた大容量ディスク。
今回はソニーの初代機を叩き台に、次世代DVDについて、
私からの視点で様々な角度から検証してみたい。

  ― スペック ―

BDZ-S77
ソニー BDZ-S77(定価45万円)
青色レーザーを用いたディスクレコーダー
としては世界初。4月10日発売予定。

「BSD-E77」は405nmの青紫色レーザーを使用した
Blu-rayフォーラムに準拠した製品。
片面ディスクで23GBの容量を記録できる。
録画時間は、ハイビジョン放送(1125i)をストリーム記録
する場合2時間、通常放送(525i)では6時間。
アナログソースはMPEG2にエンコードされて記録され、
高画質モード(16Mbps)で3時間、標準モード(8Mbps)で
6時間、長時間モード(4Mbps)では12時間。
BSデジタルチューナーを内蔵している他、
GRT(ゴーストリダクションチューナー)、
EPG(電子番組ガイド)なども搭載している。

  ― 大容量が実現するもの ―

23GBという大容量を実現したことで、現行DVDでは不可能なハイビジョン録画が可能となった。
今回は片面1層ディスクのみの発表で、2層ディスクは発表されなかった。
ハイビジョン録画が2時間という、この時間が十分なものであるかは微妙なところだ。
2時間を超えるソースは少なくないからだ。映画、野球やサッカーなどのスポーツは
ザラに2時間以上だし、自然の紀行番組でも2時間以上のものもある。
そしてハイビジョン録画は、BSデジタルチューナーからのi−LINK信号をストリーム記録するので、
録画時間はきっかり2時間以内に制限されてしまう。
ストリーム記録のため、画質云々の話はあまり関係ない。

アナログ信号の記録だが、標準モードでは平均ビットレート8Mbpsで6時間の記録。
S−VHSの3倍モードを使えば、まあまあの画質で6時間記録が可能なだけに、
これと肩を並べるのは嬉しい。私などはこれだけでも次世代DVDが欲しくなる。
そしてD1レベルのソースでは、今まで連続記録が難しかった3時間の映画なども
高画質で録画できる。現行のDVDでは2時間程度の記録を行う場合は転送レートは
平均5Mbpsとなり、画質的に厳しいと感じることも多い。

また「DVDは場所を取らない」という謳い文句があるが、一枚当たり約2時間、
高画質を求めれば1時間という録画時間ではディスク枚数が増えていくのが悩みの種で、
「VHSよりも場所を取りません」と言われても枚数が増えてはねぇ・・・と思っていた。
次世代DVDならばディスクの枚数もそれほど増えずに済み、
本当の意味でのスペースセービングにつながる。

  ― 外 観 ―

次世代を感じさせる先進的なデザインだ。ただ見ての通り、随分と大きな筐体である。
昔発売された、MUSEハイビジョンLDプレイヤーを思い出してしまった。
初代機は基盤も集積が進んでいないために大きくなるのは致し方ないところだが、
現行DVDとは使用するレーザーが異なるだけで、ストリーム記録を行う点や
MPEG2エンコーダなどは共通して使えるはず。どこでスペースを食っているのだろう。
現行のDVDレコーダーも初代機は高さが15cmもあって大きかったものだが、
現在ではその半分程度になっている。青色DVDレコーダーもじきに薄くなってくるだろう。

  ― 価 格 ―

DVR-1000
パイオニア DVR-1000(定価25万円)
世界初のDVDレコーダー。
1999年12月に発売、大きな反響を呼んだ

定価45万円。現行のDVDレコーダーが最安で
5万円前後で売られていることを考えれば、
正直言ってかなり割高感を感じてしまう。
ただしはBSデジタルチューナーを内蔵しているため、
これを除いて考えれば8万円程度定価が下がる。
とは言え、現行DVDレコーダーの初代機と
比べても10万円以上高い。
ブラウン管のハイビジョンディスプレイよりも
高い価格は、かなり抵抗を感じる。
近年流行のHDDとのハイブリッド型という訳でもない。
これは価格もそうだが、使い勝手の点で痛い。
録画ディスクも一枚3,500円と、これまた高価。とは言えこれもCD−RやMDを見ての通り、
価格が劇的に下がる可能性があるものだけに現時点では何とも言えない。

  ― 低価格化・普及の鍵を握るのは ―

現行のDVDレコーダーが、発売から3年で20万円から5万円ゾーンにまで下りてきた
ことを考えれば、3年後には10万円前後になっている可能性もある。
しかし、この価格の下落は、「DVDに録画ができる」ということに消費者が魅力を感じて、
販売台数が好調に伸びてきたからこそである。
それが次世代DVDでも同様に当てはまるのかは疑問だ。
次世代DVDと現行DVDの差別化ポイントは、「ハイビジョン録画」である。
これが必要ないなら、現行DVDでも十分だと感じる消費者は少なくないだろう。
従って次世代DVDの低価格化・普及の鍵を握るのは、ハイビジョン環境である。

  ― 次世代DVD登場の時期 ―

私は、次世代DVDが発売された時期について、早かったとは言わないまでも、
やや微妙な時期に発売されたなぁという感がある。

1つめの理由は「ハイビジョン環境の未熟さ」である。
ハイビジョンTVが家庭に広く普及し、放送の大部分がハイビジョンとなっているような状況なら、
やはり録画機もハイビジョン対応に、というのが当然の流れだろう。
逆に、TVはD1レベルの普通のテレビ、放送もほとんどがD1レベルという状況では、
録画機に次世代DVDを買うのは豚に真珠というものだ。
現在のハイビジョン環境は、ハイビジョン放送はBSデジタルに限定されていて、
視聴世帯も伸び悩んでいる。ディスプレイはプラズマなどの追い風を受けて好調ではあるが、
高価なため庶民的だとは言えない。ハイビジョンが真に庶民的なものとなるのは、
地上波のデジタル化を待たねばなるまい。だがそれも、今年から始まるとは言え、
東京・名古屋・大阪のごく狭い範囲に限定され、全国展開はあと4年は待つ必要がある。
ハイビジョンは、「普及している」とはまだまだ言えない水準にある。

2つめは、「現行DVDの存在」である。
現行のDVDレコーダーの市場はまだ立ち上がったばかりであり、しかもRW陣営と
RAM陣営に分かれている。価格が下がりつづけているのは発展途上であるという
証拠であるし、性能も年々進化している。
このように、現行のDVDレコーダー市場はまだまだ成熟していないのである。
そんな中で早くも次世代のDVDが登場と言われても、消費者は戸惑ってしまうのではないか。
そして現行DVDと同様に次世代DVDも2つの規格が登場しそうな気配であり、
購入意欲をますます削いでしまうことになっている。

  ― D−VHSとの比較 ―

HM-DHX1
ビクター HM-DHX1(9万円前後)
ハイビジョン記録ができるD−VHS機。
「D−THEATER」に対応している

HV-HD500
三菱 HV-HD500(5万円以下)
ハイビジョン記録ができる最廉価D−VHS機。
アナログソースはVHS記録で対応

青色DVDでハイビジョン録画が可能となったと言っても、ハイビジョン記録ができるのは
青色DVDだけではない。現在の主流はD−VHSだ。
ハイビジョン記録ができるD−VHS機は最安で5万円以下で買える。
MPEG2エンコーダを搭載したモデルも7万円台からあり、高くて10万円程度だ。
テープはハイビジョンが2時間半記録できるものが800円程度で買える。
またテープは最大で50GBのものがあり、ハイビジョンを4時間記録できる。
次世代DVDも2層にすればこれに並ぶが、まだ発売されていない。
同じデジタル記録メディアだが、「低価格なD−VHS、便利だけど高価な次世代DVD」
ということになる。次世代DVDが廉価なゾーンに下りてくるまでは、
これら2種は住み分けするのではないかと考えられる。

また、パッケージメディアの問題がある。現在のセルDVDと同様にして、
ハイビジョンで記録された映画などが発売されるのではないかという期待がある。
DVDが登場した時、その高画質ぶりは際立っていたが、ハイビジョンを見ると、
DVDとは別次元の画質を目の当たりにすることになる。加えて近年はプラズマや
プロジェクターなどの大画面ブームであり、大画面でも高精細な映像を映し出せる
ハイビジョンで映画を見たいという需要は今後増えてくると思われる。
ところが、次世代DVDからはパッケージに関する話が全く聞こえてこない。
これに対しD−VHSは、「D−THEATER」という規格を定め、
これに準拠したD−VHS機とハイビジョンソフトをすでに北米で発売しており、
日本国内でも最近この規格に対応したD−VHS機が発売になっている。
D−VHSソフトもいずれ発売になるだろうと言われている。

  ― 他社の動向は? ―

青色レーザーを用いたDVDレコーダーは、CEATECやCESでも多くの会社が展示していた。
従って、技術的には問題ないレベルに来ていると見てよいだろう。
ただ、「製品」として考えた場合、コストという点が絡んでくる。
また先述したように、需要がどれほどあるのか、つまり「どれほど売れるのか」という
点については、話題の大きさとは裏腹に慎重論が支配的だ。
ソニーは「世界初」という冠でブランドイメージを高めることと、戦略的な意味合いもあって
早期の発売に踏み切ったが、他社はもうしばらく静観しているのではないだろうか。

  ― 今度の展開 ―

Blu-rayディスクレコーダーは今年中に数社が発売。来年前半には東芝・NEC陣営が
AOD規格の次世代DVDを発売、規格の戦争が始まる。
今後3年ほどは低価格化は徐々に進み、地上波デジタルが全国に広がってから
市場が拡大する。それまではハイビジョン記録はD−VHSと住み分けがなされる。
といったところだろうか。

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