Yen-Xingのあばら屋 BSD物語長編外伝小説05 異世界放浪編第01章 六門世界
第11話 『奇襲』
「止まれ!ここより先はライヴァータ大司教のお部屋なるぞ!」
ハルバード(斧槍)を構えた衛兵たちが通路の両脇に立って我々を誰何する。だが制止する暇も有らばこそ、レイナが瞬時に間合いを詰め彼らに一撃を加える。ドゴッっと言う重い打撃音とともに腹部を強烈に殴打された衛兵はその場に声もなく崩れ落ちる。後ろ手に手際よく縛り上げ、警備室らしき脇の部屋へ放り込み、男たちの腰に合った鍵束で鍵をしめる。多少の時間稼ぎにはなるはずだ。先を進むと通路の先には木の扉。お互いにうなずきあい、意思を確認すると我々は扉の左右に散り、セリアが扉の錠を開けようとする。いわゆるピッキングツールで鍵穴を弄る事数十秒、軽い金属音とともに錠は開け放たれた。ほかに警報装置や監視装置が無いことを確認してからすばやく全員進入し、元通り錠をかける。室内を見渡すと正面に執務机、その前には豪奢なじゅうたんが引かれ、部屋の脇にはフルプレートアーマーが槍を持った体勢で飾られていた。別室には書庫や寝室。客間もあり、大司祭というだけあってクレインの部屋より面積でざっと4倍、豪華さで8倍といったところか。坊主がこんなに飾って何をする? 少なくともお金には困っていなさそうだ。机の上には整然と書類が並べられていた。先ほどのクレイン司教の机とはずいぶん違う・・・・・・がそんな目に付くところに陰謀を暴く種になりそうな物をおくだろうか?
ティナ、メイルそれにレイナは隣室の本棚を大忙しで検索をかけていた。grep検索を実在の本にまでかけられるようになった彼女らにとって膨大な書類や著書といえどそう検索に時間はかからないだろう・・・・・・我々は執務机の資料を調べたり同じ部屋にあった本棚を調べたりしていた。
外部からの侵入者に対し一定の対策ができた我々は安心しきって捜索に打ち込んでいた。
そう、我々は彼らが外から来るものと思い込んでいたのだ。
室内中央にしつらえられた魔方陣が光りだしても、我々は探索に夢中ですぐには気がつかなかった。我々が反応したのはその溢れ出した光が円柱状になり、その中から5つの人影が出てきてからだった。
「ふん、こそ泥か、捕らえよ!」
僧服に身を包んだ中央の男の命令に従い、他の4人が一斉に動き始める。傍らに控えていた女性が懐から符を放ち、それを瞬時に発動させると私やガーム老、それにセリアは身動きどころか声も出せなくなった。金縛りだ! 身動きが取れなくなった我々を捕らえるべく壮年の男と真っ白い仮面をつけた無貌の男が此方へ着通ってきた。
「ご主人様に何するんですかっ!」
異変を感じ取ったらしく、隣室からティナが一陣の風となって飛び込んできた。虚空から妖刀パケットリストを顕し、中に浮いた刀を右手で抜き放つと鞘が落ちるのもそのままに袈裟懸けに切り下ろす。すばやい踏み込みから抜き打ちの一撃は、数ある日本刀による攻撃の中で最速の攻撃である居合切りだ。しかし壮年男性によって攻撃はそらされた。。燃える剣を持ったその男は切りかかっては間に合わないと判断したのか、ティナにカウンターで体当たりを仕掛け、体勢を崩させることに成功していた。しかしティナも即座に体制を直し、再び女性に打ちかかる。が壮年男性が進路に割り込みそうはさせない。叩き切る直刀に対し引いて切らねば威力を発揮できない日本刀は少々部が悪い。下手に受ければ刃こぼれするし、受け方が悪いと刀が折れたり柄の部分が衝撃に耐え切れなくなり、そこから破損してしまうのだ。自然と刃を打ち合わさない柳生新陰流に近い動きとなる。乱闘の音に気が付いたレイナも隣室から飛び出してきたが無貌の男がレイナの腕を掴み壁へ無造作に投げ飛ばす。レイナより力が勝っているというのか!? 壁に衝突する前に空中で体を捻り、壁に足から着地、足のばねを使って衝突の衝撃を吸収すると投げ飛ばされた勢いを転じて空中からの体当たりをかける。勢いのついた体当たりを無貌の男は腕を組んで受け止め、そのまま腕を掴んで地面にレイナを投げ飛ばす。とっさに受身を取りダメージを軽減し、即座に起き上がり一歩間合いから離れると鋭い踏み込みからの掌底での打ち抜きでガードの上から打ち抜こうとする。が、全力を出しているレイナに比べ無貌の男のほうはまだ余力があるようだ。目の所しか空いていない真っ白な仮面をつけたその男は息も切らせずにやすやすとレイナをあしらい打撃戦へなだれ込む。重い打撃音がたちまち周囲を満たす。「ふん、どうやら獲物が自分から罠に飛び込んできたようだな」
僧服に身をまとった・・・・・・どうやらこいつがライヴァータ大司教らしい・・・・・・は此方をせせら笑う。
「貴様が来てくれたおかげで捜索の手間が省けたぞ。お前を消し去れば天使の軍団がいよいよ我が手に入るのだ!!」
それまで静かに佇んでいた青年の男は一つ頷くと、ひじを軽く曲げ、前へ出した右の手のひらの上に小さな火球をいくつも生み出した
「ラファエル、ウリエル、引けっ!フレイムストライクで焼き尽くすぞ!」
再び転移魔方陣が起動し始める。4大天使の名を冠された二人の男も転移陣へ飛び込む。ティナ達も後を追うが突然足元から伸びてきたつる草の壁に阻まれた!・・・・・・そして、ライヴァータ達の転移は行われた。
ただ、すべてを焼き尽くす5つの火球を残して