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Yen-Xingのあばら屋 BSD物語長編外伝小説05 異世界放浪編

第01章  六門世界
第05話  『旅程』
 
 

いきなり襲撃者におそわれた翌朝
我々とガーム老、それにセリアは襲撃者がやってきたと見られる「聖都サザン」をめざし出発。
人目を隠れ、夜に移動するのかと思いきや、堂々と昼日中に人通りの多い街道を使っての移動となった。理由を尋ねたところ

「こうやって堂々と移動しておる方が案外襲撃しにくいのじゃよ」

とのこと。確かに真っ昼間の人通りの多い往来では人目に付かないように襲撃するのは難題だろう。

季節は夏を過ぎて秋に差し掛かっているらしい。程良い暖かさなのが旅の助けとなった。特に防寒具も必要とせず、水分補給に余分な心配も入らないのは旅に不慣れな私たちにとって何より喜ばしいことだった。身軽なのもそれを助けた。私は特にこれと言った所持品はハンドヘルドPCだけで、後は背負った食料と水筒に寝具が少々。街道沿いに村が点在しており不足して来たら随所で購入なり自足時給なりすることができた。

心配された襲撃だが大規模な物はなく、人気の少ないところで散発的に繰り返された。しかし、「いつおそわれるか分からない」という不安は幸いにして少なかった。意外なことにメイルが非常に役に立ったのだ。

サイズが非常に小さいために発見が困難なこと。
無音(メール)通信のため傍受されたり逆探される恐れが無いこと
無線通信だから距離が少々離れていても十分通じること。
哨戒としてはもってこいだろう。

逆にティナは苦戦することとなった
普段使っている大電流やγ線レーザーだが、“ゲート”から供給されるエネルギーが不足している為、一体程度を倒す出力しか出せなかった。自然と「妖刀パケットリスト」での攻撃となるが、相手が人間くらいならまだしも、ちょっと大型の相手(ゴーレムらしい)となると文字通り全く刃が立たなかった。しかし「流れを断ち切る」という力が付いてきたようで、魔法(初めてみたときは驚いたが)が励起された時点でそれをキャンセルすることが出きるらしい。また、「怪電波」も健在らしく、はねた前髪が紫電に輝くと頭を抱え戦闘不能になる敵が続出した。そんなわけで彼女は戦闘の補助に回った。

その代わりレイナが前線でがんばることになった。あの肉球からくり出される「にゃんと聖拳」は金属製の鎧ごと相手を瞬時に切断する威力を誇った。グローブだけでも相当な威力があるらしく、一度は相手のメイス(全金属製棍棒:相当重い)と真正面から打ち合って、相手のメイスをはじき飛ばしたほどだった(当然相手のメイスをつかんでいた利き腕は再起不能)。また、攻撃を食らっても少々ならば瞬時に再生。元々レイナはRAID5で構成していたのだが、機構がこういった形になったらしい。

……魔法をキャンセルする「妖刀パケットリスト」も瞬時にダメージを再生する「RAID5」もなんとも奇妙な機能になった物だ。ガーム老は杖から火球をとばしたり水の激流を相手にたたきつけて吹き飛ばしたりしているが、やがて「ふむふむ」と戦闘中にもかかわらずメモを取ることが多くなった。

セリアは? と言うと肩に担いだ長弓を駆使しすばらしい動きをした。エルフはいろいろなファンタジーで弓の名手として描かれていたが、話しに聞くのと実際に見てみるのとでは、またまたずいぶんと違った。射程はおよそ100m以上はあっただろうか? 遠くにいる敵の急所を正確に打ち抜く技能は卓越しており、いきなり矢をつがえたかと思うと次の瞬間に彼方の狙撃手を打ち抜いたこともしばしばだった。

そうそう、一つ誤解を解いておきたい。良く「エルフは非力だ」と描写されるがそんなことは全くなかった。あるとき、彼女が使っている弓を引かせてもらった(無論、彼女に断ってだが)。私の力では弦は全く動かなかった。ティナでも無理でレイナが力を込めてようやく引くことができた。彼女に言わせると「これは力で引く物ではないです」とのことだったが、それでも相当な張力を持っていた。どうやらほっそりとした外見と膂力は別物らしい。さもなくば鋼鉄製の板金鎧+鎖帷子を貫通するような矢を放つことなど無理だろう。百年戦争の時にイギリスの長弓隊が活躍したのは決して速射力によるものだけでは無かったのだ。

……肝心の私だがはっきり言って何もしていない。
戦闘力に長けているわけでも無し、偵察が出きるわけでも無し。
荷物持ちが関の山だが、その分道中で色々考えることができた。

なぜ「対異端特別審問部隊」がいきなり派遣されたのだろうか?
ガーム老に聞いた話、『エルドの教えに敵対する者を密かに討つ諜報暗殺集団』とはいうものの個人に対して派遣されるような組織ではなく、敵対あるいはそれに準ずる宗教集団や政治結社に対して行動するらしい。

此処で一つの疑問がある
「対異教徒特別審問部隊」が私の暗殺を謀ったとしてそれは如何なる理由に寄るのか? 単に「別世界からの招かれざる来客」だから処分しようというのだろうか? もしそうであっても私が此処へやってきたことを感知できなければならない(でなければ当て推量でガーム老の屋敷に来るとは考えにくい。何しろ拾われてから私は一歩もガーム老の屋敷から出なかったのだから)。

エルド教の何者かが私の存在を感知できた……ガーム老は「クレアボヤンス」の儀式が使われたのではないかと言っていた。ひょっとしてエルド教の誰かが何かの特殊な召喚術を使い、それが私が此処にやってくるきっかけになったのではないか……? そして、その召喚したエルド教の何者かが支配に失敗した私を消す為「対異教徒特別審問部隊」を動かしたのではないか?

あくまで仮定にすぎないが。

この辺りは首謀者に聞くしかないだろう、運良く捕まえることが出きればの話だが……
 
 
 

なに? ファンタジー小説のくせに戦闘シーンがさっぱり無いってどういうことかって??
あまりそういった描写は得意じゃないんだが……次回やってみることにしよう
 

(続く)