冥途 of the DEAD
・第十四話 : Damage Control
「……おかしいです」
「やはり、お前もそう思ったか」
「???」
私の独り言にミレイはうなずき、P-canのなおなおは首を傾げます。
私の疑問点は一つ
「いくら何でも耐久度が高すぎる」
すでに並のシステムなら十数個はシステムダウンできるほどのダメージを与えています。しかし、目の前のDeinonychusには深刻なダメージを負った気配はありません。私達だってただダメージを与えていたわけではありません。脆弱な部分を探し、そのポイントへ攻撃を集中させたにもかかわらず、です。これでダメージが無い。とするならば……
「コアは別にある。ということか」
「或いはダメージ管制システムが独立しているか、です」
おそらくはその両方なのでしょう、しかし館内にはジャミングが掛かっています。私達で通信できないレベルですから目の前のDeinonychusだけが都合良く通信できたとしてもリアルタイムでダメージ管制するには復号処理のディレイは無視できないはずです。回復速度から考えてそれだけのディレイが発生しているとは思えません。と、いうことはDeinonychusのダメージ管制システムはかなり至近に存在すると言うことです。
「一体何処に……」
「足止めする、早くしろっ!!」
ミレイが対物ライフルでDeinonychusの両足を打ち抜きます。回復はすぐに始まりましたがそれを押さえつけるように弾倉を次々と変えながら彼女が足止めしています!
素早くDeinonychusをサーチします。右頭……左頭……肩……胸……腕……腹……脚……尾……一体何処なのでしょう!?
つんつん
頭髪センサーを動かし的を探る私の肩をなおなおがつつきます
「その、あそこじゃあないでしょうか?」
彼女が指したところ……それはDeinonychusの「影」でした。
「その根拠は?」
「私、舞台とかに立つから分かるんですけど、この部屋、照明が多数有って私達の影は消えるのにDeinonychusの影だけはくっきり出ているんです!!」
言われてみればなおなおの指摘通り、Deinonychusは多方向から明るく照らされているのに影はくっきりと床に映っています。間違いないでしょう!
「でも、一体どうやって攻撃すれば」
「なおなおさん、私が左腕をただ、食べさせたとお思いですか?」
「えっ?」
「もっとも、左腕1本だけでは足りないみたいですが……合図したら指示したところに最後のNullPointerException
弾打ち込んで下さい!ミレイ、グレネードありったけ叩き込んで下さい!!」
「どうなってもしらんぞっ!!」
叩き込まれたグレネードは四発、それはその場で爆発と爆圧を生みだしDeinonychusの動きを再び封じると共に修復を行うための一瞬の隙が出来ます。その間に私は左の頭へ急襲します。爆焔と爆音を隠れ蓑にして近づいた私に気が付いたようですが……反応が遅い!
「これでも……喰らいなさいっ!!!」
1発目……右からの「雷撃突」……文字通りの雷撃を纏ったほぼ零距離からの刺突……それは奴の左頭後頭部までを貫通しました。
「まだまだぁっ!!」
2発目……刀から手を離すとそのまま地を蹴りバク転気味に後方へ宙返り。右足でDeinonychusの顎をカチあげます。同時に左足を大きく振りかぶります
「これで……とどめです!!!」
3発目……Deinonychusの顎に食い込んでいる右足を支点に大きく振りかぶった左足はそのまま振り下ろされDeinonychusの鼻先へ叩き落とされます。俗に言う「ネリチャギ」とかいわれる蹴りに近いです。上下からの蹴りにより強制的にDeinonychusは妖刀アクセスリスト2本目を飲み込まされる形になりました!
飲み込んだのを確認してDeinonychusの右頭からの噛み付きと腕による引き裂きを避けつつ下がります!
タイミングを計ったとはいえ自分から爆発に飛び込んだ為ダメージは少なくありません。その場にうずくまった私に襲いかかったDeinonychusですが……突然その場に凍り付きました。
まるでフリーズしたかのように
「今です!」
私の合図と共になおなおは最後のNullPointerException弾をDeinonychusの「影」に叩き込みます。巻き込まれないよう、最後の力で私はその場から離脱します。その一瞬後……今までで最大の爆発と閃光が床に叩き付けられました
Deinonychusは……無数の結晶となってその場に崩れ落ち、その結晶も微細な粒子へと崩壊し……最後、細かい塵となってその場にうず高く積み上がったのでした。