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冥途 of the DEAD

・第十三話 : NullPointerException
 
 

「ミレイ、そのイングラム貸してください!」
「使えるのか?」
「打つだけなら何とでも!!」

私は彼女からイングラムをひっつかむとDeinonychusの二つ目の頭へ向けて弾をばらまき始めました。暫く相手をして分かったことがあります。確かに皮膚は強靱で弾を通しませんが痛覚がないわけではありません。それに皮膚全てが強靱というわけでもないです。例えば……

「いくらなんでも此処は柔らかいはずです!!」

そう、鼻の頭付近ですとか首筋稼働部などです。ただ、皮膚の下に今度は更に強靱な筋肉があるようで弾が内部にまでダメージを与えている気配はありません。

「やむをえん、これの出番か」
「ちょ・・・・・・ちょっと!?」
「支援しろ!!」

私が飛び退くのとミレイがその長大な銃身をDeinonychusにむけトリガーを引くのは殆ど同じでした。全長1.5m、本来なら銃架を使いしっかり支えて使用する対物ライフル……「Barrett M82」本来は装甲車やヘリに使用される非常に強力なセミオートマティック対物ライフルです。両手でホールドしてこれを扱えるのは本来あり得ない膂力を出すことが出来る彼女の特性ならではと言ったところでしょうか。

「ダッ!!ダッ!!ダッ!!」

その一撃はDeinonychusに食い込み、着弾地点の肉を削り血を流すに至っていますが……

「ちょっと待て!一体どういう構造しているんだ!?」
「だから行っているじゃないですか、バケモノだって!!」

これを持ち出してさえ「多少効いている」程度にしかダメージを与えられていません。確かに皮膚は破れ体液らしき物は飛び散っていますが……削れた筋肉はすぐ盛り上がり、皮膚が再生しているように見えます。

「一旦引くぞ!」
「引くってどっちにですか!?」
「こっちだ!」

残ったスタングレネードをDeinonychusの鼻先に叩き付け、一瞬ひるんだ隙に出口へ向かったのですが……Deinonychusは瞬時に回復し、目の前に来ていました。まさに「しかし、回り込まれた!」の世界です。私達の背中にはすでに出口があるのですが振り返ったその瞬間に襲いかかられるのは確実、こういうのを

「蛇に睨まれた蛙というのだったかな」
「少し違うと思います」
「覚悟は出来たか」
「余り良い覚悟ではありませんが」

体内まではそれほど強靱ではないはずです。噛みつかれるその一瞬なら内部から反撃も出来るはずです。私達が覚悟を決め突撃しようとしたその時、

背後から炸薬の音が響き渡ると共に、Deinonychusの口内へ「何か」が飛び込み
次の瞬間、Deinonychusの右頭は轟音と白色閃光と共に消え去っていました。

「馬鹿なっ!?」
「今の反応……まさかっ!!」

私達の背後から散弾銃を手に前へ進み出たのは「P-canのなおなお」その人でした。コッキングして次弾を装填するとゆっくりと銃口をDeinonychusにむけ、今度は左の頭を狙います。襲いかかってくるDeinonychusにかまう風もなく散弾銃を発射、爆発の衝撃波でDeinonychusは後方へ飛ばされます。

「ティナさん、ミレイさん、大丈夫ですか?」
「一体今のは……」
「NullPointerException、です」

NullPointerException

指し示すポインタの先がnull値であったときに発生するエラー
仮想電脳空間上ではエラー発生を空間率が修正しようとして空間湾曲及び衝撃波が発生するため発生させないよう何重ものフールプルーフがセットされています。

兵器として私用は出来ないことはありませんが、私達VHがそれを起こすことはないように厳重に制御機構にロックがかかっています。元々人間?な彼女だからこそ扱える弾頭です。しかし……

「呆れた回復力ですね、もう復旧が始まってます」
「それでもかなりスピードは落ちてます! 残り一発有りますか?」
「ええ、最後の一発ですが」
「十分! 合図したら叩き込んで下さい!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(続く)