冥途 of the DEAD
・第十二話 : Dual head
がっ!!
食いちぎられた左腕はそのままに、左足でDeinonychusの頭を思いっきり蹴り飛ばし間合いを開けます。Deinonychusの後頭部からは私が突き刺した妖刀アクセスリストが内部から貫通しています。どんな生物にとっても弱点である脳幹、つまり生命維持器官を破壊されたDeinonychus、決してダメージは少なくないはずです。追撃といきたいところですが……肝心の左腕、バックアップからのリカバリが効きません。喪失したのは肘から先の部分。応急処置として開放部を簡易シーリングします。
「データリカバリ、不能ですか」
「いま、このMirrorHouse内は高レベルジャミングが働いているようだ。こいつが出てきてから外部と一切連絡が取れなくなった」
次々と弾倉を交換しながら左右のイングラムで濃密な弾幕を張り、Deinonychusを足止めしながらミレイが応えます。外部との通信が不能と言うことは食いちぎられた左腕はもちろん、このボディが全損した場合のリカバリもできないと言うことです。突破口は目の前のDeinonychusを倒すのみ。しかし、この状態ではなかなかきついですね
「F_SummonAccessListToRight(&SordAddress)」
まずは獲物を……右手に妖刀アクセスリストを召還しようとしましたがerror値が返ってきました。そんな馬鹿なっ!?
ごっ
ごっ
ごっ
ごごごごごごごごごっ
不気味な鳴動音が前から聞こえてきました
妖刀アクセスリストを喉に突き刺したままのDeinonychus、その左肩が異様に鳴動を始めています見る間に盛り上がり、それは瞬く間に頭大……いえ、頭その物へと変化し始めました
「じょ・・・・・・冗談でしょう!?」
「自己器官再生まで持っているとはさすがは蜥蜴だな」
「そーいう問題じゃあ無いですっ!!」
私は妖刀アクセスリストクラスを再作成し、喉に突き刺さったままの古い刀からクラス継承させると再びDeinonychusに飛びかかっていきました
「そうか、恐竜型ゾンビVHねぇ……人間型じゃあないからVHって言い方もおかしいけどけど」
「私だけ先に出るように言われまして……でも、まだ脱出できていないんですよ」
「しかもこちらからの通信も遮断された。こりゃ相当悪質な奴だな」
「私も何とかしたいのですが、いかんせん通信が出来ないのでは……」
「ところで、そのショットガンは?」
「あ、これはミレイさんが私に渡してくれたんですよ。自分の身は自分で守れって」
バックドアゲートの前で屋敷内から脱出してきた「P-canのなおなお」から色々話を聞く。本来なら滅多にないシチュエーションなのだろうが状況が状況だけに余り有り難くない。彼女から聞いたところに寄るとDeinonychusとかはダメージがまるで通らなかったらしい。彼女たちの火力で歯が立たないとなると……「アレ」使うしかないか?しかしどうやって届ける?作るのは簡単だ。彼女が持ち出してきたショットガンの弾頭にでも仕込めばいいだろう。だが、通信が出来ない以上内部に弾丸を直接届けなければならない……とりもなおさず、それはDeinonychusの前に立たなければならないと言うことだ。
「それをティナさんに届ければ良いんですね?」
「そうなんだけど・・・・・・ってちょっとまったぁ!?」
管理人が止める間もあらばこそ、私が作った3発の「アレ」をひっつかむや否や、「P-canのなおなお」はそのロングストレートの黒髪をなびかせつつ、屋敷へと走り出した!!?
あわてて私も中に入ろうとするが、扉に阻まれた!
「ちぃっ!内部からロック掛けたな!!」
携帯PDAを接続し、管理人は電子ロックの解除に取りかかった
「何とか間に合えば良いんだけど……使い方間違えたら全員巻き添えを食らうぞっ!!」