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冥途 of the DEAD

・第九話 : This is "Snake"
 
 

玄関ホールから緩いカーブを描いて2階へと繋がる階段を駆け上がりながら切り捨てたゾンビVHだけですでに2桁、さらにホールから左翼へと進み大広間へと至るルートへは無数ののゾンビVHが蠢いていました。

「よくぞまぁこんなにいるものです」

一体一体切って捨てるという悠長は事はしていられそうにないです。時間も余りありませんし。

「クロック調整:外部対応クロックをミリセカンドオーダーに修正」

私達ネコミミメイドUNIXメイドは元がOSだけに内部クロックは非常に高速です。そのままの速度で処理を行うと余りのスピードにユーザが耐えられません。それが故に外部に合わせてクロックを減速して対応しているのですがしばらくの間だけ0.1セカンドオーダーからミリセカンドオーダーまで引き上げます。速度にしておよそ100倍、消耗も疲労も100倍ですが少しの間……このゾンビVHを片づける間なら耐えられます!!

「はぁぁぁぁぁああああああああああっっ!!!」

どごおおおおおぉぉぉぉぉぉん!!!
 

瞬時に加速し、突撃します、その速度により衝撃波を発生させゾンビVHへ叩き付けます。ゾンビVHの弱点は既に体を構成しているフレームが浸食されているため強度的には非常に脆く、ちょっとした衝撃でも破壊されることです。強烈な衝撃波を正面から喰らったゾンビVHはその場で崩壊していきます。残ったゾンビVHは僅か、妖刀アクセスリストの一降りで発生させたソニックブームで叩きつぶします

周囲に結晶化したゾンビVHの残骸が積もる中、私は更に奥へと進みます。先ほどの衝撃波で壁に貼ってあったミラーテクスチャや装飾品も粉々になっていますが見通しがよく、ちょうど良い感じです

「さて、皆さんはどちらかしら……あら、上ですか」

周囲を探査する事暫く、生体アカウント反応は3階から返ってきましたがその数は11!?そばに別の反応がありますが、この反応が返ってくることなんてあり得ないはずです。それとも先程の衝撃波による所為でエラーでも起こっているのでしょうか?

「まぁいいです。行けば分かることです」

突入してから既に5分、かなりゾンビVHを破砕してきたので時間は稼げているはずです。3階への階段は正面に重厚なゲートが有りました。周囲についている無数の傷痕はゾンビVHがこの中へ進入しようとして果たせなかったことを示します。

「これは電子ロックですか、こんなものは私の手に掛かれば……あら?」

ロックシステムに介入して気が付いたのですがこのロックはちょっとした物でした。プロなら兎も角遊び心で手を出そう物なら攻勢防壁で手痛い目に遭うはずです。しかもそのロックに外部から強制介入した痕跡があります。僅か数十分前のことです。おそらく、取り残された被害者の中に腕利きのハッカーがいて、非常事態と言うことでロックシステムに強制介入し3階へ避難したと物と思われます。所要時間を考えるならばまずまずの腕前です。

周囲のゾンビVHがあらかた一掃されたため、通信感度がかなりクリアになりました。一度状況報告しておいた方がいいでしょう

「ミレイ、聞こえますか?」
「感度良好だスネーク」
「誰がスネークですか、マスターに繋いで下さい」
「了解した」

『あー、マイクテスマイクテス。本日は晴天なり』
「マスターまでぼけないで下さい。それよりもサルベージアカウントの所在確認できました。全員3階の隔離エリアに居るようです。ですが、一つだけアカウントに異常があります」
『それね。それはそのままでいいから。詳細は戻ってから説明するから』
「了解しました。では、3階に突入します」
『あと、Mirror-Houseで暴れすぎているぞ』
「え!?」
『建物がそんなに持たないから早めに脱出しろ、いいね?』
「了解しました。では」
『ああ、それと』
「はい?」
『passphaseは「******」だから』
「またローカルネタを(- -#)」

通信を切ると3階へと駆け上がります。そこは従業員の業務エリアで飾りは何もありません。無機質な打ちっ放しの構造フレームがむき出しの中、目の前には倉庫らしき空間と大きな部屋が一つ。そこには「会議室」と書かれています。扉をノックするとpassphaseの要求ウィンドが来ました。マスターの指示に従って入力を行います

「『姉小路三条六角蛸薬師錦』っと巫女さんじゃあ有るまいし何考えているのかしら?」

打ち込むと、扉内部からがたがたと物を移動させる音がしてきました。扉の前に本棚などを置いてバリケードにしていたようです。探査センサーによるとこの辺の壁は以外と薄い上に内部補強材も入っていません。単なる石膏ボードテクスチャだけのようです。これなら……

「皆さん、これから内部に突入するので壁から離れて下さい」

内部にメッセージを送り、全員壁際から離れたのを確認した上で先ほどの要領で衝撃波を創り出し。壁に叩き付けます。思った通り石膏ボードテクスチャだけで構成されていた壁面はあっけなく吹き飛びました。もうもうと立ちこめる破片はすぐに落ち着き、室内を見渡せるようになります。扉の前には思い木製本棚が置かれていましたが、この安普請では役に立たなかったでしょう。

内部のアカウントは12人、。その様相から此処まで待避するのにかなり大変だったことは容易に想像が付きます。男性11人、全員成人で目立った外傷はなし。歩行困難な者もなし。これなら後は自力脱出可能そうですが・・・・・・あら、アカウントと人間の数が合いません。このアカウントは・・・・・・?

え!?
ええ!!?
ちょっと待ってください!!!?

「マスターッ!!! 一体これはどう言うこと何ですかっ!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(続く)