冥途 of the DEAD
・第六話 : BackDoor
「さて、どうした物でしょうね」
Mirror-Houseの正面ゲートを見上げ、ティナはそうつぶやく。防火用シャッターは外部からの侵入者を防ぐため、文字通りファイアーウォールの役目も果たしているらしく相当の重量と強度を誇っているらしい。こういう場合シャッター横の避難用出入り口が使えるはずだがゾンビVHが内部から出てくる恐れがある以上迂闊にそれを開放して使う訳にも行かないようだ強行突入という手もあるらしいのだが……。
「正面から正規で入ったとは思えません。そうするとこの辺り、のはずなのですが……」
正面出入り口から向かって右、およそ20メートルくらいの場所、人目から見えないそこは表からは植え込みで見えない場所だった。ティナに私も付いていったのだが、以外にも外から見えないだけできちんとした通路になっていた。検討を付けたのか、ティナはその辺りの壁を指でなぞりだした。
「此処は一体?」
「おそらくメンテナンス用の従業員通路です。すぐ其処に地下へ繋がる階段もあります。」
「ここから進入するって言うのか?」
「いえ、調べてみましたが従業員用通路も防火壁が降りていました。強度は外側と同じ規模です。私が進入するのはこの場所からです。」
そういうと、なぞりだしてから数秒、此処だとでも言うようにポケットからマーカーを取り出して○を付けると裏拳で其処の場所をひっぱたいた。音もなくその部位から数メートル四方が手前に浮かびだし左右にスライドした。
「これは…?」
「バックドアですね。誰が作ったのかは分かりませんがおそらく今回の事件を引き起こした犯人が作った物だと思われます。ここからなら内部に進入出来そうですね。」
周囲を調べ外部にトラップが無いことを手早く確認する。手練れは自分が使ったバックドアに罠を仕掛け、脱出時などに追撃を受けないように備えておく物なのだ。
「では、行って参りますわ。『マスター』は此処でお待ち下さい」
「あ、ちょっと!」
「此処でお待ち下さい、そう申し上げます、『マスター』では内部は危険すぎます。」
「じゃあ、外で帰還を待て、と?」
「応援を呼びました。私が脱出する際は外部と内部の私とで呼応する必要があります。その際の管制をお願いします」
「……分かった。必ず戻れよ」
「では、行って参ります」
ティナは、くるりとその場でターンする事によりデート用の装いからいつものメイド服にスキンを換装する。
両手を体の前に回し45度の綺麗な礼を私に捧げ、ゾンビVHが闊歩するMirro-house内部へと進入していった。
「……これは、応援がいるなぁ。あーもしもし、聞こえますか?」