目次に戻る
 
BSD物語

Vol.03 ゴキブリと巨人と悪霊と

キプロス島でレールガン用弾丸作成プログラムを受け取り弾丸を作成。これで今後の展望も立つだろう。大抵の敵なら何とかなるかと思い、枕を高くしてエーゲ海で停泊することにした。無人島内の火山活動でできたカルデラ湾に投錨。艦内で夕食は取れたての海の幸、舌鼓を打った。その後贅沢なことに1人ずつ士官用寝室で寝ることにした。
 
 

安らかな眠りに包まれていた管理人をゆざぶって起こしたものが居た……
ほとんど開かないまぶたを強引に開けるとティナが其処にいた。
「ご主人様、起きてください」
「いまなんじ?」
「朝の3時です」
「……ねる」
「余りよく無い知らせと悪い知らせがあるんですが、どっちから先に聞きたいですか??」
「よくないほぉ」
「ジブラルタル海峡がスペイン海軍の軍事演習という名目で閉鎖されました。ですが、実際にスペイン海軍が動いた形跡はありません。待ち伏せされているようです」
「わるいほぉは?」
「ゴキブリ戦艦3隻がエーゲ海に配備されました。こっちへ向かっています」
「ゴキブリ戦艦!?」
その奇妙な名称に思わず跳ね起きる。

「マレ・ブラッタとか言う名前のステルス戦艦なのですが……それ以上の情報は公開されていません。今も検索中なのですが……HIT有りません。おそらく非公開の特殊部隊かと思われます」
CICへ急いで向かいながらティナの情報を確認、全員がブリッジ集まったところでブリーフィングを行う。エーゲ海に秘密裏に配置されたらしいステルス戦艦は推定3隻。他にもギリシャ本土ペロポネソス半島空軍基地にスクランブルがかかっているとの情報もあった、夜明けと共に攻撃機が出てくることが予測され、まだ夜が明けない今の内に出航・迎撃することにした。そうすれば空軍も思うとおり攻撃できないはずだ。

「マレ・ブラッタ達の包囲網を強行突破してジブラルタル海峡へ向かうしかないのか? 無視して行けないか?」
「ネットゲームの方では次のキャンペーンステージがジブラルタル海峡です。海峡で待ちかまえているのは間違いないでしょう。このまま背後からゴキブリ共に挟撃されるのは避けたいですね。」
「今更スエズへ戻っても北極海へ行くのに時間がかかりすぎるしなぁ……」

 かくしてステルス戦艦ことマレ・ブラッタ」の相手をすることになった。白々と夜明けを迎えたのだが……

「きゃ〜っ! 何ですかこれは!!」

「ティナさん ホウ酸団子です! コックローチです!! バルサンです!!! ゴキパオです!!!! アセトンです!!!!!」

「いや〜!! もう帰る〜!!!」

姿を現した“マレ・ブラッタ”

上下に扁平ででこぼこがほとんど無い船体
真っ黒くつやつやと光沢まである塗装、
艦首から艦尾へカーブを描く二本のアンテナ
そして素晴らしいまでの高機動性……
確かにゴキブリだ、間違っても台所で会いたくない。
そのフォルムは彼女たちをパニックに陥れるには十分すぎた。
さらに多弾頭対艦VLSが飛んできたがこれまで真っ黒。あたかも子ゴキブリのバンザイアタックだ。ティナはパニック状態、レイナは失神寸前。メイルに至っては泣きながらその辺りを飛び回っている……ってそっちにあるのは手動火器管制システムじゃないか!

「このこのこのこのこのこのこのこのこのこのっっっっっっ!!!!!!!!!」
メイルが無茶苦茶に振り回した手は発射ボタンを出鱈目に叩き、レールガンやレーザーの乱射を至近距離でまともに浴びたマレ・ブラッタ達は……沈んだ。巻き添えでその辺の島々まで攻撃したらしく不気味な鳴動と共に火山活動が開始。盛大に噴煙と火山灰と火山弾をばらまきはじめ、それに紛れてエーゲ海を脱出したのだった。まぁ、お陰で空軍の追跡も振り切れたし……ヨシとするか(笑)

マレ・ブラッタの敗因はゴキブリらしく装甲が柔らかかった事とエーゲ海だったこと。エーゲ海は別名「多島海」、島が多くては高機動性を発揮することもままならなかったようだ。ゴキブリ級の耐久力や繁殖力が無くて助かったとは後で解析したレイナの談。もしそうだったら熱湯でもかけるか?

ゴキブリ退治が一段落付いたところでティナに確認した
「ティナ、ジブラルタルに配備された新型の詳細データは?」
「新型の超巨大航空戦艦「ムスペルヘイム」……北欧エリアのエースが乗る様ですが衛星写真には空母2隻と戦艦1隻しか写っていないんです。お約束通り合体変形してくれるんでしょうか?」
「もしそうだとすると……その機構こそが奴の欠点さ」
「どういうことですか?」
「まぁ見ていてくれ。それと奴を補足したら合図を出すからそのタイミングでレールガンのコントロールをこっちへ回してくれ」
「楽しみにしています。」
 
 
 
 

エーゲ海を後にし、いよいよジブラルタル海峡へ
イベリア半島と北アフリカの空軍基地から発進してきた攻撃機でレーダーは真っ黄色(航空機は黄色で示される)。あたかも雲霞につっこんだ様。その上海峡で逃げ場はなく回避にも限界がある。無数に飛んでくる対艦ミサイルの迎撃であっという間に手一杯になりレイナやメイルも手伝っての蠅叩きとなった。入り口で雑魚をあらかた片づけ、ようやく海峡へ突入したところにムスペルヘイムが待ちかまえていた。その構造は……予想通り戦艦の両舷に空母をドッキングさせたものだった。

先手を取ったのはムスペルヘイムの方だった。
既に艦載機で位置を掴んでいたのだろう。56cm砲と30cm砲、それに対艦ミサイルを織り交ぜ間断なく攻撃。回避のため右へ左へ回頭を強いられる。こちらの切り札レールガンは艦首固定型のため発射方向に艦首を向ける必要がある。やむなく光学兵器群で攻撃するが従来型よりパワーアップしたらしい敵の電磁防壁を割引いても装甲が半端じゃない、一撃必殺とは行かない。狙いを付けられる距離まで強引に接近していく。

「ティナ! レールガン手動へ切り替え!」
「了解! 照準及びトリガー渡します!」

操作盤からトリガーと照準機構がせり上がってくる。宇宙戦艦ヤマトの波動砲のソレを思わせる機構を握り、スコープの向こうにあるムスペルヘイムを睨む。お互い雨霰と砲弾とレーザー打ち合う中、艦首同士を向け一直線につっこむ。チャンスは一度きりだ!

「見切った! FIRE!!」

すれ違いざま、祈るような気持ちでトリガーを引く。弾はムスペルヘイムへ超音速で飛び込んでいき、特徴有る曳航音が遅れてやってきた。着弾はした物の様子に変化はない。失敗か?
「マスター! ムスペルヘイムが裂けます!!」

56cm50口径砲が再び火を噴こうとしたその瞬間、ムスペルヘイムの船体は先頭から3つに裂けだした。分解したとたんに電磁防壁も消失、こちらの攻撃を防ぐ術もなくなり、さしもの巨人も海峡で無惨な姿を晒すこととなった。
 
 
 
 

「マスター、おなかすいたぁ」
「今何時だ?」
「え〜と、11時って所ですね、ご飯作ってきます〜」
レイナがそう言ってキッチンへ降りていった。
ポルトガル沖で休憩と昼食、艦載機を飛ばし哨戒を行う。また、次の戦場の情報や海図データをネットからかき集める

「しかし、何故あんな事になったのでしょう?」
食後のお茶を飲みながらティナが尋ねてきた。
「簡単なこと、そりゃあ戦艦も空母も船体自体は頑強に作られているだろうけれど……
 流石に船体の接続部分まで同じような強度は保てない。しかも分離・接合可能な機構となるとやっぱり無理があるものさ。其処を狙われればどうなるか……」
「最悪分離、そうでなくても船体に異常振動が出るためまともな操艦は不可能になる?」
「正解、まさか分離した上に電磁防壁も消えるとは思わなかったけど」
「空母の余剰電力で防壁を維持していたみたいですね〜」
 
 

「例のシナリオだけどその後の展開は分かる?」
「シナリオが追いついていない分もありますが……高速四天王なんてのがビスケー湾にいます。超高速巡洋艦が配備されたようですね。 あとは、ノルウェーの方にある原潜基地を叩いておきたいですね、でないと背後から襲われます。北極海の決戦前にはワールドチャンピオンが待ちかまえています」
「堅い?」
「そりゃもうカブトムシ並みに堅いです」
「堅いのかどうか微妙だな(汗)」
 

「そいつらを黙らせるとして、ビスケー湾からドーバー経由で北上、フィヨルドで鮫狩りの後で最終決戦か……」
「じゃ、さくっと四天王からたおしちゃう?」
「よ〜し、今日はビスケー湾とノルウェーを潰す。決戦は明日だ」
「じゃ、進路はビスケー湾だねっ 鯨♪ 鯨♪
「メイル、捕鯨に行くのでもホエールウォッチングに行くのでもないんだぞ?」
浮かれているメイルに注意していると背後から声を掛けられた
「みんなで観光じゃないんですか〜」
振り返った所に立っていたレイナはいつの間にか白地にライトブルーのセーラー服に着替えていた……
「てっきり泳ぐものだと思ってましたのに……残念です」
ティナに至っては……濃紺の名前つき一体型水着に着替え、上目使いで人差し指同士をつつきつつすねている。その多弾頭ギガトン戦略核ミサイル並みの破壊力の直撃を喰らった管理人が喀血の上再起不能に陥いり三途の川の向こう岸、花畑まで逝きかけたのは言うまでもないだろう。
 
 
 
 

ちょこまかと現れる戦艦群をなぎ払いつつビスケー湾に到着。大物はいないようだが……
「四天王はどこだ?」
「あれじゃないですか? ミサイルと魚雷乱射しながらこっちにやってくる」

「ふはははは! 近からずば目によって見よ! 遠からずば音に聞け!
 我ら高速四天王! 此処に見参!」

「お〜 なんか言っているぞ。名乗っている辺りは見事だが」
「名乗るだけのことはあるか楽しみですわ」
「げ、自分で発射したミサイルも魚雷も追い越したぞ。こいつら一体何ノット出ているんだ?」
「推定で70ノットぐらいは出ていますね」
「はやっ!」
「でもでも、その分装甲が紙みたいにぺらぺらってこととかないかな?」
「そうですね、大概こういう船は軽量化してあってその分弱いってのがセオリーですから装甲の薄さには期待できますわ」
「ご主人様、レーザー打つだけ打っておきます」
「当たる?」
「お任せください。あのスピードを逆手に取ります」

「はははははは! 我に追いつく艦は無し!! 無敵無敵無敵ぃぃぃぃぐわしゃあああ」

速ければいいと言うものでもない。あるヤツはレーザを避けた所、自分の発射した魚雷が舷側に当たり沈没。またあるヤツは下手に回避たあげく座礁、其処をレーザに止めをさされた。

あわれ、“青き疾風”の異名を持つ超高速巡洋艦ヴィントシュートス」4隻はティナの動体予測能力の前にあっさりお亡くなりになった。高速四天王に合掌

鎧袖一触で四天王を倒しバカンス(笑)を楽しむことに
幸いシーズンは夏。観光にはうってつけだ
ビスケー湾の真珠と呼ばれるサン・セバスチャンに行くことにした

近くの岸壁に船を隠し、カッター(内火艇)で港へ。もちろん彼女たちはセーラー服に。(だれだスク水なんて言った奴は)
あちこちを見て回る時間もそれほど無いので市場へ行くことにした。これはこれでおもしろいのだが……海辺の町だけ有って新鮮な海の幸がどっさり。ティナ、レイナその辺りの魚を手当たり次第に買うんじゃない! まぁ、美味しそうなのは事実だが……因みに日本なら時価物の赤身が捨て値だった。実にもったいない。遠慮無く買いたたき刺身にタタキにステーキに寿司に……今思い出しても全くあれは美味しかった。

その後、ビーチへ泳ぎに。流石にこの辺りではネコミミ少女は珍しいのか注目の的に。屋敷近辺では普通になった(慣れただけとも言う)からなぁ。なにやら「オタク」だの「ジャパニメーション」だの驚嘆の声が上がっていたような気がしないでもないが(笑)
 
 
 
 

つかの間のバカンスを終えドーバー海峡から北海を横断しノルウェーへ。
大型潜水艦レムルース」及び潜水艦基地への攻撃を開始したのだが……

「レムルース、ロストしました!」
「またフィヨルドに隠れやがったか! かまわないから爆雷その辺に絨毯投下!」
「爆雷は積んでいませんわ」
「なに!?」
「今の装備で対潜攻撃に使えるのは対潜ロケットだけですわ。2〜3発は当てなきゃいけないので見つけたらロストしないようにがんばって追いかけてくださいね」
「ロケットの射程を伸ばせないの?」
「射程もありますがそれ以上に対潜用の音波探知機の有効距離がそんなに長くない上、ポリマーマスカーで隠れられては超長距離での攻撃は無理です〜」
「ご主人様、レムルースからSLCM(潜水艦発射型弾道ミサイル)です 回避してください!」
「この至近距離でSLCMぶっ放す馬鹿がどこにいるんだぁ!」
「眼下にいます」
「……」
「……」
「……」
「……」
 
 

海を割ってSLCMがその禍々しい姿を現す。回頭したZeroの右舷で爆発。直撃ではなかったが至近距離での爆発だったため、爆発の衝撃波が船体を直撃、ブリッジを激しく揺さぶった。シートから振り落とされ、かろうじて受け身をとったが……

起きあがった管理人の視界に入ったのはパネルからスパークが飛びエラーサインであふれるブリッジ。そして気絶しているメイド達、メイルは体が小さい分投げ出されなかったようだが、他の二人は床に投げ出されていた。横たわったまま起きあがる様子がない。レイナの傍らにはメイドキャップが放り出されていた。

「ティナ!レイナ!しっかりしろ!」
ティナに駆け寄り抱き起こす。

……

…………

………………

様子がおかしい。いっこうにリブートがかかる様子がない、何か致命的なダメージを負ったか!?
「……緊急起動モード。ブートレコード切り替え……ファイルシステムとハードウェアに異常を感知、現在自動復旧中……」
「ミレイっ!」
レイナに眠るもう一つのWindows系ネコミミメイドOS、“ミレイ”が緊急起動したらしい。
「ミレイ、現状報告!」
「状況は理解している。さっきのSLCMは超小型戦術核爆弾だ。核分裂に伴うγ線バースト(ガンマ線バースト)が回路で電磁誘導を発生、高電圧の電流による回路のショートが発生した。ティナとメイルの回復は当座は無理だ」

「一時的に船体の全制御任せてもいけるか?」
「少しの間なら大丈夫だが処理落ちは覚悟してくれ。その間二人の復旧はもちろん出来ないぞ?」
「先に奴を倒さないと復旧以前に全滅だっ!」
「了解した……エミュレートスタート、機関・ダメコン・レーダ処理優先……全機能は発揮できない! 火器管制全部にまで手がまわらん! 光学兵器系一時封鎖、対潜ミサイルの火器管制はマスターに回す! レーダー、機関、ダメコン制御システム暫定復旧!」
「船体へのダメージは!?」
「今チェック中だ。5番6番火器管制回路と2番核融合炉の制御パネルでショート発生、それに伴い核融合炉で出力にばらつきが出ている。今補正中だ……予備回路に切り替え完了! 出力調整、タービン回転数シンクロ! 左舷フェーズドアレイレーダー、機能一部不全!補正入るっ!!」
「これは……間違ってもかする訳にはいかないな……」
「マスター、敵のSLCMはあと3発だ」
「3発?」
「レムルース型に搭載されているSLCMは2発、残存しているレムルースは2隻で
 先の一発分を引けば残り3発だ。間違っても喰らうなよ……SLCMの直撃を喰らえば今度は沈む!」
ミレイには相当な負担がかかっているのだろう、パネルを操作する手は止まらず額に浮いた油汗を拭く余裕もない。一気に決着を付けないと……!
 
 

「3時方向よりSLCM!」
「緊急回避! 間に合えっ!!」
再び爆発。発生するγ線バーストを今度は電磁シールドを展開しダメージ緩和。
すれ違いざまにレムルースへ対潜ミサイルの雨をお見舞いし一隻の爆沈を確認

「後一隻!」

「8時方向より魚雷群接近! 10本!」
「迎撃!」
「だめだ、機銃で撃破……しきれん!」
下から突き上げるような衝撃、ミレイによるとまだぎりぎり大丈夫とのこと
「左舷回頭!魚雷の発射方向に奴がいるっ!」
「再び魚雷群 同方向!!」
「魚雷群に突っ込む! 対ショック!」
「マスター!?」
「さっきと魚雷と挙動が同じなら…!!」

接近する魚雷群の僅かな隙間を狙って船を滑り込ませる。

ノルウェー沖の鮫こと潜水艦は相当な数がいた
伊達に魚雷を回避しながら潜水艦狩りをしていた訳じゃない。既にあることに気づいていた。発射された魚雷は接触するまで爆発しない。つまり磁気感知信管でも音響感知信管でもなく接触信管しか使っていない。当たらなければ大丈夫という予想どおり、魚雷群と船体がすれ違うが爆発する様子はない!!

そして眼前に最後のレムルースがその姿を現していた!
「これでもくらぇぇぇぇ!」
スーパーロボット大戦の某キャラの様なセリフを吐きつつありったけの対潜ミサイルを遠慮無く発射。かくして“悪霊”の異名をもつレムルース達を文字通り海の藻屑と葬ったのだった
 
 

「ふぅ、久しぶりに出てきたが、いきなりこんな状況とはな」
「二人は大丈夫なのか!?」

 残敵が無いことを確認した後、未だに起きない二人を医務室に運びミレイに見てもらう。正直、こんな形でミレイにあうとは思わなかった。

「心配いらん、とっさに対超強度電磁波モードにしていたようだ。ダメージは最小限に抑えられている。人間で言うなら脳震盪に近いな。レイナも私が起きたときに修復した。自動修復用ナノマシンを投入したから後しばらくで意識も回復するだろう」
「ミレイ……レイナに戻るのか?」
「さっきやってみて思ったが、私では処理が追いつかない。処理にどうしても無駄な部分があるしな。それにティナも私がパートナーでは気まずいだろう?」
「何時もすまないな」
「それは言わないお約束……とでもいわせたいのか? 全く……」
あきれ果てたようなミレイ。いつもは会えない彼女だが、彼女なりに心配してくれているのは分かる。ただ、つきあいが不器用なだけだ。

「ひとつ良いことを教えてやろう、潜水艦以外は戦術核を使ってこないはずだ。安心しろ」
「水上艇では自分もダメージを負うからか?」
「察しが良いな……核はリスクが大きすぎる。これ以上は大事になるから組織としても隠しきれない。 自爆覚悟ならあり得るかもしれないが……それにだけ気を付けろ。自棄になったテロは何をしてくるかわからんからな。後は任せても大丈夫だろう。再び私を呼ぶようなことがないように頑張れ」
 
 

「ふにゃぁ……おはようございますぅ、ごしゅじんさまぁ……」
背後からティナの声が聞こえた。滅多に見られない光景だがティナが寝ぼけつつ起動してきた。
「ほらしっかりしろ。戦闘は終わったぞ」
「ええ〜!?」
「あらあら、終わってしまったのですね〜」
「まだせかいがぐるぐるするぅ」
いつの間にかメイドキャップを付けたのだろう、普段のおっとりとしたレイナに戻っていた。メイルは……いつものように飛んでいるがまだ安定していない。さっきからふらふらと飛んでいて時々壁に当たっている。
「軽い脳震盪ってところだ。」
ミレイのことをさりげなく隠しつつ状況説明。核兵器の使用がこれ以上ないだろうと言うことを伝えると一同安心したようだ。

用心を重ね、電磁防壁を展開しつつその夜は其処で停泊。

いよいよ明日は北極海決戦だ!

(続く)