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BSD物語
 

クライアントへのプレゼンテーションが長引き、先方を出たのは夏とは言えすっかりくらい時間になっていた。
 

CH98:認証キー
 

「あ、ティナ?今やっと終わったよ。」
「お疲れ様です。プレゼンは上手くいきました?」
「こちらの提示した案に多少修正と言うところ。若干変更はあるけれどなんとか予想範囲内かな?」
「夕食はどうされます?」
「今から帰ると22:00近いからなぁ……こちらで食べて帰るよ」

幸い、クライアントから代金が振り込まれたばかり。お財布の中はそれなりに暖かい。メイド系列店を梯子して珍しく一寸一杯……と思ったのが大失敗だった。
 

00:30

『ピンポーン』
夜更けだというのに家の呼び鈴が鳴らされた。
 

「こんな夜更けに……何方ですか?」
「あー、オレオレ……って、ティナ、いきなり斬りかかるんじゃない!」
「午前様に手加減は不要でしょう。一体何を寝ぼけたことをしているんですか」
「マスター、お酒くさぁい」
「あらあら、酔っぱらいさんですか。でも何でご自分で鍵開けなかったんです?」

「あー、それが……」

「「「それが?」」」
 

「鍵落とした」

バタン
ガチャガチャガチャ
ガガガガガ、カッシャン

「あーっ!? 扉閉めるな!鍵掛けるな!!シャッター下ろすな!!!」
「鍵見付けてくるまで中に入れないと思って下さい!!」
「朝まで外に居ろと言うことですか!?」
「幸い暖かいですから風引くこともないでしょう。一晩反省してなさい!」

かくして管理人はその晩、屋敷の庭先で一夜過ごすこととなった。鞄を枕にして上着を毛布代わりにして軒先で野宿していた管理人だったが、目が覚めると何故か上着はハンガーに掛けられ、鞄は枕元にあり、毛布が肩に掛けられていた。というより、なんで枕が頭の下にありますか。流石に硬い床の上で寝ていた所為で若干体が痛い物のそれほど辛い状態ではなかった。

玄関の鍵は開けられていたのでリビングにはいると既に朝食の準備は出来ていた。

「ご主人様、今日は早いんですからしっかり食べて下さいね。」
「あー、鍵探し?」
「私もお付き合いしますから早く探さないと……」
「確かに」
「あと、屋敷内パスフレーズは全て書き換えました。後でチェックお願いします。」
「そっちの方が大変そうだ」

「誰の所為だと思っているんです?」

「……申し訳ない。」

なお、鍵は一杯引っかけていったメイドバーで落としたらしく、メイドさんが拾って管理していた。
これが原因でまたもやティナの機嫌が悪くなったのだがそれはまた別のお話だったりする。
 

( 続く )

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あとがき代わりの駄文その98

えー、半分実話です。
お酒飲んだときには忘れ物がないよう注意しましょう(--ゞ