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BSD物語
 

GWが終わって暫く、私の住む地域は急激な寒気に見まわれ、気温は一時的に春先にまで戻った。
 

CH97:メンテナンス
 

「うーっ寒い寒い。寝る前に一寸お茶でも飲んでいくか」

私の部屋から風呂場までは少し距離がある。冬は館内暖房(サーバ廃熱の有効利用)が効いているし夏は風通し(館内空調による)をよくしているためほぼ過ごしやすい環境にあるのだが、この日は急激な気温の変動でサーバルームのみの温度調整としていた。館内全体に温度調整入れるとそれなりに大がかりな事前チェックとかも必要になるのだ。

時ならぬ寒波に震え、何か温かい飲み物でも……そう思った管理人は夜遅くにキッチンに佇むレイナの姿を見た。皿等は夕食後にすぐに洗っている。何かを作っているのだろうか?

「レイナ、こんな時間に何を?」
「これはご主人様〜、お見苦しいところを見られましたわ〜」

彼女の手には新品のフライパンと薬缶。どちらも今日買ってきたばかりの物だ。旧来の物がいい加減駄目になって来たと言うことなので、昼の買い出しの時に買い替えたものだ。それほど良い代物ではないが「長持ちはする」と金物屋の親爺に太鼓判を押して貰った一品だ。その後レイナが親爺となにやら話し込んでいたのは見ていたがその時には気にも留めていなかった。

「今やっているのは昼間に聞いていたこと?」
「はい、使い初めの手入れです〜」

薬缶は数度お湯を沸かすことを繰り返し内部に皮膜を作ること。
鉄製フライパンは何度も油を刷り込んで油馴染みをよくしておくこと。

「どんな物でもそうですけど事前の手入れ・事後の手入れだけでずいぶん使い勝手は変わりますわ」

「うーん、そういう物かな」
「試してみます?」

そういって、レイナは新品の薬缶で作ったお湯から紅茶を作ってくれた。美味しくはないですよ。とレイナは言っていたが確かに普段のお茶に比べて味が変だし色も黒っぽい。なんでも鉄分が溶けだしているかららしい。

実例を見せられ納得しつつもそろそろ自分のPCもフルメンテナンスの時期かなぁと思わされる夜の一杯だった。
 
 
 
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その97

刃物や鍋ってのは日常のメンテナンスが物を言います。
PCも日常的なメンテナンスを欠かさないようにしたい物です。