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BSD物語
 

最近、私用で使っているサブPcに内蔵しているデータ領域用HDDの調子が悪かった。まだ使用可能な内に換装するべきだろうとは思っていた。
 

CH95:記憶媒体
 

ここ暫く、私はクライアントの出先で作業をしていた。連日業務が長引き帰宅は深夜近く。屋敷に帰るとレイナによれよれに草臥れたスーツを預け、夕食を取りながらティナからのデイリーレポートを受ける。詳細な指示が必要な物に関してはそこで決済を出すが大抵のことはティナ達に任して置いて大丈夫だ。後は風呂に入り、メイルから仕分けした後のメールを受け取り軽く巡回先のWebLogとサイトを回って寝る。そう言う日々が続いていた。

確かにHDD買わなければならないのは分かっていたがなかなか購入する余裕がなかった。そんなある日の金曜日。珍しく作業が早めに終わり1時間程度の残業で帰る見込みが付いた。鞄を持って出先のデータセンターから出たところで携帯端末に着信があった。

ヘッドフォンの入力を音楽再生から着信接続へ切替、画面出力を携帯端末から眼鏡内蔵網膜投写型ディスプレイへ切り替える。

「はい、管理人です。」
「ご主人様、ティナです。今お時間宜しいですか?」
「あー。こっちも今出先から帰るところ。どうした?」
「いえ、ご主人様出先の最寄り祖母地図にてHDDのセールやっておりますので取り急ぎご一報をと」
メッセージと共に流れてきた価格表には手ごろな価格で現状使っている調子の悪いHDDより大容量の商品ラインナップが掲載されていた。

「うーん、これなら手持ちで買えるかぁ。一寸今月の小遣い厳しいけど」
「お立ち寄りになられますか?」
「そうだね、寄り道していく。夕食は今日遅くなりそうだから食べてかえるよ。」
「でしたら、少々お待ち下さい。」
「?」

まもなく、私の携帯端末へ大容量ファイルが転送され始めた。

「わ! 一体なんだ!!」
「端末入力ロックしてますからキャンセルも電源停止も出来ませんよ〜」
「弄っているのはレイナかっ!どう言うこと何だっ!!」
「すぐ分かりますわ〜」

およそ1分ほど、ようやく端末制御がこちらに帰ってきた。が、端末内にそれらしい不審なデータはなかった。どう言うことだ?

「こういうことです」
「!」

みれば、網膜投射ディスプレイ内にミニティナがいつの間にか入り込んでいた。どうやら屋敷から私の携帯端末へ自らの分身を送り込んできたらしい。

「最近お忙しくて一緒にお出かけもままなりませんでしたし、買い物に付き合っていただけませんか?」
「仕方がないなぁ」

楽しそうに八分音符(♪)を浮かべるティナを見つつ、そう言えばこれはミニデートか?と思う管理人だった。
 
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その95

駄目になる前にHDD換装。それにしても500GB、\10K-とは恐ろしい時代になった物です。