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BSD物語
 

RPG等をするときに、キャラクターの名前を身近な人から取るのはよくある話だ。今プレイしているオンラインゲームで使っているキャラも身近なある人から名前を借りることにした。
 

CH92:クレイモア
 

『ただ今より、午後21時をお知らせします。Pi Pi Pi Piー』
「あら、もうそんな時間ですか。ご主人様、後はティナにお任せ下さい」
「このバッチ処理組終わったら、上がらせてもらうよ……ごほっごほっ」
「明日も色々業務有りますので根詰めないようお願いします。」
「ティナは今から夜間監視業務?」
「明日の朝食準備終わってからですから……23時からになります。ご主人様、風邪は引き初めが肝心です。今夜は早くお休み下さいませ。」
「うん、そうさせて貰うよ。」
「では、これで私も失礼いたします。」
扉の前で私に一礼するとティナは部屋から退室した。その旨が空中ディスプレイにも表示される。此処は屋敷のサーバ群を統括するオペレーションルームだ。

さて、ティナが夜間監視業務に入るまでおよそ後2時間。風呂やら他を片づけるとなると実質使えるのはおよそ1時間ほどと言うところか。軽くシャワーで体を洗った後、オペレーションルームへ戻る。バッチをサーバへセットされているのを確認後、パーソナル端末用のポートとセッションを準備、22:50に設定が自己消去されるよう手配する。

自室に戻り、パーソナル端末を起動。デスクトップ設定を切替、でてきた透明の中空アイコンをダブルクリックし、オンラインゲームをスタートさせる。長年に渡って続いているゲーム「神々の黄昏」というゲームである。このゲームには一つ問題があって開放要求されるポートに若干問題があり時折スパムメールの足場にされるのだ。故に学校などの公共施設からの接続は禁止されていることが多い。とりもなおさずそれはそういった施設からでもこのゲームをしようと言う人が多い事でもあるのだが……

当然この屋敷の環境も本来はそのポートは封鎖してある。以前このゲームをしようとティナにポート開放要求をしたのだがセキュリティの観点から却下された。くわえて、私が熱中して体調崩しかねないから、とも。

屋敷の全セキュリティシステムがティナの監視下に置かれるのが夜23時。それまでならば私にでも多少の細工は可能だ。そうやってポートを開き、閑を見ては毎日こつこつプレイしていた。

さて、私の目の前には馬に乗った威風堂々たる女剣士「Tina」がいた。長さ2mにも達する長剣「クレイモア」を両手で操る攻撃特化型の剣士である。
念のためネットワーク監視システムを別窓で立ち上げティナの介入がないことを確認する。OK、問題はないようだ。ゲームLogin画面からキャラクター選択画面へ入り……それは起こった。

其処へいたのは何時ものフルフェイスヘルムを被った女騎士ではなくネコミミをつけたメイドだったのだ。

「げぇっ! 孔明!!」
「ご主人さま、私が夜間監視業務時にしか屋敷のネットワークを監視していないとお思いでしたか? 私は屋敷のネットワークを常時監視できますし、LOGは随時チェックしているんですよ? まったく、風邪引きかけているのに一体何をされているんですか?」

そういうと、ティナは画面の中からこちらの現実世界へと抜け出してきた。こういう芸当が出来るのも彼女が電脳擬人化人格だからだが……にっこり笑った彼女の左手には2mもある長剣が握られていた。

「ティナ、其の剣は何?」
「ご主人様が『ティナ』に渡して居られた『クレイモア』にございます。」
「えーと、『話せば分かる』?」
「『問答無用』です。ご主人様、明朝までゆっくりお休み下さいませ」

そういうと、ティナは剣の腹で私の頭を打った。
意識が反転する前、あのクレイモアティナ気に入ったのかなぁと思った管理人だった。
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その92

今だにプレイ中のオンラインゲーム「ラグナロク」からのSSです。
万が一、この話に似たキャラを見ても他人のそら似ですので、宜しくお願いします。