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BSD物語
 

もうすぐ年末という何時通りに忙しいある日、大きなダンボールが送られてきた。運送業者は……フエデックス。珍しいこともある物だ
 

CH91:助っ人
 

「ティナ、運送業者が持ってきたダンボールは何処に運んだ?」
「リビングに運び込んで貰ってます。キャスター付き台車で持ち込むなんてかなりの重量です。絨毯に跡が付かなければいいのですが」
「その辺はプロだね。床に毛布引いて養生してあるよ。」
「あ、フエデックスの人が呼んで居るみたいですのでちょっと行って参ります。」
リビングに向かったティナを追い、私も移動する。其処には縦横1mほどのダンボールが鎮座ましましていた。耳を澄ますと、ゴソゴソ何か動いているような音がする……。生き物?しかしこんな物を送られる心当たりはないのだが。

「送り先は何処になってた?」
「えーと……フィンランド!?」
「フィンランドって……レイナが里帰りしていなかったか?」
「ええ、送り先はフィンランドの魔術師ギルドになっていますね、あ、手紙が着いてます」
「えー、なになに?」

『親愛なるご主人様へ

ご無沙汰しております、レイナは思ったより無理を重ねていたようで来年1月末までの修理と調整をギルド長より命じられました。年末の繁忙期に屋敷の仕事をお手伝いするのは無理なので変わりの者を送ります。少しでもお役に立てればと思います。』

「だ、そうだ」
「とりあえず開けてしまいましょうか……って刃物開封禁止?また制限色々ありますね」
「上積み禁止に丁寧に扱え、放り投げ禁止に……なんだ?電波禁止??」

私がシールの意匠を読んでいる間にティナは梱包に使われていたガムテープを引っ剥がした。するとゴソゴソと言う音は段々激しくなり目で見てはっきり分かるほどになった。

「って。これ生き物じゃないのか!?」

「ぷはーっ!!」

「わっ!何か生まれたっ!!」
「生まれたとは失礼ですぅ」

「なんですか、このちんちくりんのカーネルは……」
「はいっ! 私こそ北欧のギルドが作り上げた汎用お手伝いシステム『Nano Linuxですっ』」
「……NanoLinux!?」

なんでも、本来はメインのUNIXにぶら下げて使う汎用サポートシステムらしい。現在魔術師ギルドで開発中のそれを実地運用テストと言うことでレイナが一体借り受けてくれたらしい。が、その姿はどう見ても

「なぁ、ティナ。私にはSDレイナにみえるんだが」
「ご主人様、私にもSDレイナに見えます」
「まぁいい。じゃ、とりあえずFTPサーバの管理から手伝って貰おうか」
「はいっ!わかりましたですぅ」

些か舌足らずな口調は可愛く、今まで屋敷になかったキャラクターだなぁと思った瞬間、何もないところで……こけた。

「ううう、イタイですぅ」
「……ティナ、あの子の面倒見てやってくれ。私は冬季旅行の準備をしている」
「あっ!マスター逃げたっ!!」

手伝いは来た者の、その将来に些か不安が増えた休日だった。
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その91

一時的に外部HDDドライブを設置してみたのでこんなSS書いてみました。ティナは以前にもマスコットキャラ化してみたこと有ったのですがレイナは初めてです。