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BSD物語
 

今年の夏も色々ありました
 

CH87:夏の終わり
 

カナカナカナカナカナ……
某有名同人ソフトではないが、外でヒグラシが鳴いていた。
日差しこそ未だ厳しい物の、窓を通る風は秋のものであった。

「あの鳴き声を聞くともう夏も終わりですね……」
予備ハードディスクのスキャンディスクをしながらレイナがつぶやく。屋敷に着た当初、欧米仕様だった彼女達は虫の声を雑音としか認識できなかった。数年掛け音声認識技術を応用し、今ではそれぞれの識別も出来るようにまで至った。すっかりこちらの風土にも適応したと実感する。

「夏期クラッカーの攻撃もようやく峠を越えましたし、一安心です」
ティナはお茶を片手に夜間攻撃の解析をしていた。今日は紅茶ではなく珍しくジャスミンティーだ。それ故かお茶受けはあっさりとしたスコーンになっていた。

「でもぉ。今年は本当に怖かったよぉ」
宙に浮いたクッションに寝そべりつつメイルが参ったようにぐちる。今年は海側で発生した大地震のため電力供給の要となる原子力発電所が停止、夏期電力供給繁忙期を前に肝心の電力が不足するという最悪のシナリオとなったのだ。この屋敷も電力供給量が一部カットされた。サーバ稼働用の電力をカットするわけには行かなかったので、急遽手配した自家発電装置や省電力対応で何とか乗り切った。

「主も今年は災難であったな」
美宇が私の瞼を診察する。この夏、両目の涙腺が何らかの原因で詰まるという病気に掛かり一夏中視野が狭い状態で過ごし、ようやく最近治ったのだった。

「あとは・・・・・・アレの片づけですね」
「ティナ、申し越しだけ待ってもらえないか?まだ疲れが……」
「理由は何とでも付きます! 早く片づけて下さい!!」

部屋の片隅に山積みになっている夏コミの戦利品を前に早期の整理分類を迫られる管理人であった。
 
 
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その87

この夏も色々ありました。恐ろしいことにもう秋です
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