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BSD物語

梅雨前線が停滞し
北はきな臭くなり
ティナ達はセキュリティ維持に余念がなかった
 
 
 

CH78:懐紙
 

「お〜い、ティ……」
お茶を入れてもらおうとしてティナに声を掛けて、途中で止まった。美宇の私室に居るのも珍しかったが、口に懐紙をくわえ、刀を抜いていた

妖刀アクセスリスト

 幾度と無く彼女の危機を救ってきた愛刀だ。しかし、現実世界で抜き放つのは少し珍しい。外見は日本刀とはいえ、本来は電脳仮想空間でその真価を発揮する刀、現実世界では模造刀程度の切れ味しかない。それなりに切れはするが正宗や備前長船ほどすさまじい物ではない。

 口に懐紙をくわえるのはツバが刀身に飛んで錆を作るのを防ぐため。しかし、これだって仮想電脳の刀である妖刀アクセスリストには何ら意味のないことだろう

 程なく、彼女は刀をさやに収めた。そのまま刀を何時のように彼女の私的フォルダにしまったところでこちらに気が付いたようだ。

「何時からご覧になっていました?」
「刀をポンポンみたいなのではたいていたところから。でもアレに意味があるの?」
「まぁ、プログラムにそういう手入れが必要か?と言うことなのでしょうが……力ってのは振るえてこそ力です。いくら義がこちらにあっても力無くしては意味がありません。力を持つと言うことはその責任と維持の義務が生じます。ましてやこの様なご時世です。メンテナンスだけはしっかりしておかないと……」

「いずれ、ホットウォーがある。と?」
「起こって欲しくはありませんが予断は許しません」

 彼女のその表情は過去に数度有った大規模クラック攻撃を事前に察知した時の表情と同じだった。そういうご時世であることを悲しく思うと共に、この世界状況が落ち着くよう祈る気持ちだった。
 
 
 
 
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その78

戦争とかそういうレベルで既に想定するときが来ていると思います
あまり歓迎できる話ではありません……