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BSD物語

花の色は移りにけりないたづらに……
はて、誰の歌だったか
 
 
 

CH75:花散る季節
 
 
 

平安時代においては一般名詞で自動的に特定の物を指すことがあった

「祭」といえば現在京都三大祭りにあげられる「葵祭」
「花」といえば「さくら」

それだけ昔から馴染みの深い物だったのだろう

が、周知の通り桜というものは非常に散りやすく咲いたと思ったらアットいう間に散ってしまうもので……

「マスタァー! 一体どうするつもり!?」
「どうする。っていわれてもなぁ・・・・・・」

桜前線北上予想から推定される桜満開は運良く日曜、しかしその日管理人は仕事が入ってしまい前から予定していた屋敷の花見が出来そうになくなったのだ。ティナやレイナは「まぁ、仕方がありませんね」とあきらめた物のどうにも収まりがつかないのがメイル。数日前から桜前線北上情報を各地のサーバを飛び回って集めるわ毎日桜開花レポートを管理人に提出するわそれはそれは力の入りようだった。それがこの程度で……となるとむくれるのも無理はなかった

「うーん、打ち合わせ日時は変更効かないし、時間調整もこれだけの時間となると難しいし……どーしても夜にずれ込むぞ」
「なら、夜桜観賞といきませんか?」

打開策を打ち出したのはティナだった

「夜桜ねぇ・・・・・・確かに風流だけど夜桜で有名な円山公園か? 確かに綺麗だけど酔客はおおいし人混みかなりのものだぞ」
「そんな遠出しなくても屋敷の桜で大丈夫ですわ〜」
「屋敷の桜って……くらいじゃあないか」
「お任せ下さい〜」

レイナが物置からゴソゴソと取り出したのは巨大なぼんぼりだった。高さは2mほど、桃の節句で飾るぼんぼりの巨大版と思ってもらえば間違いないだろう。

「なんだこりゃ!?」
「最近出回っている夜間用照明装置ですわ。光をフードの部分で一旦緩衝させるためそれほどまぶしくはならないですよ」
「ぼんぼりってのはそういうものだろうけど……一体いつの間に」
「ご主人様の都合が悪くなって夜桜観賞になりそうと判断した頃にレンタルしてきました〜」

どうやら彼女たち、「あきらめた」訳ではなく「別の方法で花見をする」打開策を先に打ってきたらしい

かくして、今年の花見は屋敷での夜桜観賞と決定したのだった。
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その75

「花見は良いんだけどねぇ……」

庭中に散乱している桜の花びらを見て一同ため息を付く
薄いし水分すって地面に張り付く桜の花びらというものはそれはそれは掃除しにくい物なのだった。