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BSD物語

最近、週末は一寸出かけて帰りは終電近くになることが多い
仕事の関係で飲みに行ったり何だり……
という事にしてあった
 

CH69:忘れ物
 

「ただいま〜」
「ご主人様、お帰りなさい。背広お預かりしますね」
「自分で掛けられるよ。ハンガー貸して」
「いえ、ご主人様に任せると絶対皺が寄りますし、形も崩れますからお任せ下さい」

と、ティナに押し切られて背広を渡す。ティナはクローゼットから木製スーツハンガーを取り出し掛ける。今日も仕事のつき合いで一寸繁華街で仕事先のクライアントと飲みに行っていたのだ
もっとも私自身は酒に強くないので適当に切り上げるのだが……

みると、背広をハンガーに掛ける際、きちんとポケットの定期や財布を外に出している。なんでも入れっぱなしだと背広の形が崩れるのだそうだ。(そーいうところに無頓着だから皺が寄るんですby ティナ)

「あら? 携帯情報デバイスのバッテリーそろそろ切れる頃ではありませんか?……ご主人様、鞄の中でしょうか?」
「え〜っと、あれ? 無い!? 無い!!?」
「どこかにお忘れに!? 大変、情報ロックはかけてますよね!? 漏洩したら問題なデータは入ってませんよね!!?」
「クライアントの情報はデバイスに入れていないけど……! あ、ティナ、IP電話とって。今日行った先に確認してみる。どこかで無事に回収されていればいいんだけど……」

携帯情報デバイス、それは一世代前の携帯電話から更に進歩した物だ。IP電話はもちろんPcで使うのとまったく変わらないインターネットのブラウジングも中空にウィンドを展開することで可能になっている情報端末だ。

すでに、時間は深夜。警察には落とし物の連絡した物の、飲みに行った店は閉まっていた。
飲みに行った数件の店への確認はやむを得ず翌朝となった。結果、とあるお店にて無事に保管されていることを確認し管理人はほっと一息ついた。
 

「今日の夜に取りに行くよ。流石に日中開いていないみたいだし」
「まぁ、飲み屋では仕方がありませんね……昨夜バタバタしてお風呂入られてませんでしたよね?準備できてますが入られますか?」
「ありがとう。じゃあ、入ってくるね」
 
 

ぱたん
脱衣所の扉が閉まったことを確認し、ティナは中空にメッセンジャーウィンドを開き全員にメッセージを送った

-from tina- "皆さん、聞いていました?"

-from mail- "うん、マスター、また落とし物?"

-from reina- "まぁ、そーいうところがご主人様らしいんですけどね〜"

-from tina- "まったくご主人様の注意力散漫は問題ですね……「また」ですよ? 財布落としたのも今年で3回ですし"

-from mail- "でも、携帯情報デバイス見つかって先方で保管してくれているんでしょ?ティナおねぇちゃん何を心配しているの?"

-from tina- "毛細血管個人認証システム内蔵ですから第三者が中のデータ覗くのは至難ですけど……それでも悪意のある第三者が覗かないとも限りませんし……メイル、頼まれてもらえません?"

-from mail- "デバイスに潜り込んで暗号化掛ければいいの?"

-from tina- "デバイスの位置は……今のIPは……で、keyはこれね"

-from mail- "10メガバイト単位の暗号化キー!? しょうがないとはいえ重いんだけど…… はぁ じゃあ。行って来るね"
 
 
 
 
 
 

-from tina- "到着しました?"

-from mail- "んー、いまデバイスが待機状態なんだけど、どうしよう"

-from tina- "美宇さん、お手伝いお願いできます?"

-from μ- "メイルがデバイスにloginできればいいのだな? いまこちらから起動するようお願いしてみよう。しばし待たれよ……よし。これで入れるはずだ"

-from mail- "あれ?"

-from tina"どうかしたの?"

-from mail- "いやほら。ボク達って余所じゃ殆ど知られてないでしょ? だから誰かに見られたらご主人様に迷惑かかるかなってデバイス内蔵のCCDカメラで様子確認したんだけど、お店って閉まっているんだよね?"

-from reina- "ええ、ご主人様はそうおっしゃっていたましたね。何方かいました? お店の人が開店準備してるんじゃないでしょうかぁ"

-from mail- "だけどみんなティナおねぇちゃんみたいな格好だよ?"
 

ティナは自分の前に表示させた中空メッセージウィンドを握りしめていた。その指先は強く握りしめすぎたためか、既に白い
 

-from tina- "……画像データ転送して下さい。私専用アドレスに暗号化掛けて"

-from maill- "はい、これ。……なんていうのかな。最近話題のメイド喫茶と言うお店? 喫茶店みたい"
 

ぱきっ
乾いた音がリビングに響いた
中空メッセージウィンドがティナの握力に負けてひび割れた音だった
 

-from tina- "メイル、GPSデータにアクセス。現在地をこちらに"

-from mail- "ティナおねぇちゃん……メッセージが怖いんだけど(^^ゞ"

-from tina- "AsciiArt付けている暇があるならさっさと送りなさいっ!!"

-from mail- "ははははいっ!!"

-from tinal- "レイナさん、お願います"

-from reinal- "はいはいお任せ下さい♪ この緯度と経度に該当するメイド系のお店は……こちらですね♪"

-from tina- "……昨夜も一杯仕事有ったのに飲みに行ってその上メイドに見とれて忘れ物ですか……昨夜もいーっぱいウィルスとクラッカー来たんですよ……"

-from reina- "これは「お仕置き」ですね♪"

-from tina- "デバイスの管理しっかり出来ないなんて……先方にばれたら管理人の自覚が問われます"

-from mail- "じゃあ、やっちゃう?"

-from μ- "今回は主の自業自得だな。頭冷やすと良い"

-from tina- "美宇さん、給湯システムにアクセス、ご主人様がシャワー浴びているときに水温を0度に変えて下さい"

-from μ- "心得た。主よ、覚悟すると良い"

-from reina- "何時も通り湯船には42度でお湯張ってありますし風邪引くこともないでしょう。楽しみですわ〜"

数分後、風呂場から悲鳴が上がったのは言うまでもない
 
 
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その69

え〜と言うわけで管理人は最近忘れ物が多いです

もし、気が付いた方がおられましたら

メールにてご一報を(笑)