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BSD物語

元々欧州のとある場所に立っていた館を明治時代にとある資産家が日本へ移築したのが、今我々が住んでいる屋敷の由来だ。それゆえ家の規格など大柄な人が多い欧州基準でできており何かに付けオーバーサイズな事が多い。しかし、たまにはこんな事も……
 

CH67:活動範囲
 

 その日は取り立てて何かあったというわけではなかった。
新型ウィルス騒動も一段落し、掲示板も夏の騒ぎが終わった。クラッカー達もこの国で行われている総選挙の動向を伺っているのか静かな者だ

そんな落ち着いた初秋。
私はティナに紅茶を入れてもらうべくキッチンのカウンターテーブルに腰掛けていた。

長年使い込まれてアンティークな雰囲気を醸し出すようになった飴色の木のテーブルは其処へ向かう人間(含むUNIXメイドやデーモン)を柔らかく包んでくれた。

カウンターの向こうではティナが珍しくハミングをしながら紅茶を入れるべく動いていた。その動きはなめらかで決してあわただしい物ではない。天井からつり下げてある多重ラックには小分けにした様々な種類の密閉型紅茶容器が納められている。その中からいくつか取り出すとティースプーンでそれぞれから葉を取り出しブレンド。一方、キッチンのレンジでは沸騰寸前の湯がしゅんしゅんと音を立てていた。もうじき適温だろう。

「ご機嫌そうだね」
「だってご主人様と二人っきりでお茶だなんて久しぶりですから」

そう、レイナはメイルを伴って買い物にいって夕方まで帰ってこない。美宇はなにやら例会とかで出かけたままだ。今までもそういうことはあったが大抵ティナが忙しく確かに彼女の言うとおり二人っきりでお茶などというのは数カ月ぶりかも知れない。

程なくして紅茶の蒸らしも終わりティナが二人分をティーカップに注いでくれる。鮮やかな赤の色と落ち着いた香りはは私の好みに合わせてくれたのか。お茶請けはしっとりとしながらもシンプルなクッキーだ。

一口

紅茶の深い味わいが口の中に広がる
最初はストレートで飲むのになかなか慣れなかったが毎日飲んでいるウチに少しずつその味が分かりはじめた。

ティナとたわいないおしゃべりをしつつ紅茶とクッキーを味わう。と、お変わりが欲しくなったが二人とも結構飲んだので既にティーポットは空っぽだ。

「もういっぱいお代わり良いかな?」
「お任せ下さい」

とキッチンへ戻り再び葉っぱのブレンドをはじめる。彼女の後ろ姿をみつつ、ふと気が変わった。今度はミルクティーにしようと

「あー、ちょっと良いかな?」
「なんで・・・・・・あ」

彼女の返事はそこで止まった
ふと降り向いた拍子
彼女のシッポが其処にあった茶葉入れをひっくり返してしまったのだ

幸いひっくり返した容器は一つで被害はそれほどでもなかったが……

「う〜む、こういうことも有るんだねぇ……」
「お願いですからみんなには黙ってくださいね(^^ゞ」

彼女らしからぬミスに私は苦笑を押さえつつ、ミレイと美宇が組上げた独自の屋敷内監視システムに記録されているで有ろう今の映像をどうごまかした物か思案するのであった。
 
 
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その67

今回のお話は大阪の某所にあるとあるメイド系のお店であった
一寸したハプニングを見て思いついた物です
いい雰囲気のお店でしたのでまたおじゃましたいと思います