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BSD物語

断続的に大陸から仕掛けられるクラッカーからの攻撃
残暑を過ぎても収まらない地球温暖化による猛暑
そして、
発表されたばかりのΜ$のセキュリティホールを突く形となった新型ワームが追い打ちだった
 

CH66:新型筐体
 

「クライアント06のウィルス定義更新No66を確認、続いてNo67を……」

「ティナ、クライアント06はさっき更新作業完了したんじゃなかったのか?」

「あら? 申し訳ありません、処理が一部ループしてしまったようです」

ふと、ティナの様子を見ると周囲にうっすらと陽炎が見える。慌ててティナの内部モニタを確認すると内部温度が50度を超えていた。

「ティナ、処理緊急停止!! レイナ、ミレイを緊急呼び出し後ティナの業務を引き継ぎ! 急いで!!」

私は発令と同時にティナに駆け寄る。ティナは今まさに倒れようとするところでぎりぎりで受け止めるのに間に合った。その体は熱い。

「どうしてこんなになるまで報告しなかったんだ!」
「いま、屋敷のセキュリティは厳戒態勢を引いています。此処で要の私が倒れる訳には……」
「要が倒れてからじゃあ意味がないっ!!」
「全くその通りだ。体内温度が40度を超えたところでマスターに報告すべきだったな」

両手にペルチェ素子クーラーと熱廃棄水冷チューブをもってミレイがやってきた。

「貴女の世話になるつもりはありませんわ」
「強がりは無意味だ。喋るのもやっとなのだろう。マスター、ティナの体内に溜まった熱を強制廃棄する。済まないが席を外してくれ」
「たのむ」

如何にOS少女といえ、その心は人間の少女とそう変わらない。
例え主人といえど見られたくない部分もあるのだろう。

そうして、部屋の外で待つことしばし……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「きゃーっ!?」

「どうしたっ!?」

一向に終わらないティナの快復作業に業を煮やした管理人はティナの絹を切り裂くような悲鳴に思わず室内に飛び込んだ。その目に飛び込んできたのは……

胸元から大きく肩口・背中まで開いた半袖ワンピース。腰から下はというとぎりぎり見えるか見えないかまで丈が切りつめられたマイクロミニ。放熱を考えアルミ繊維を織り込んだガーター

その、目にも露わな姿は頭のホワイトブリムがなければメイドとは到底言えない様相だった。
 

「ふごっ!!」

声にならない音をあげて鼻から何かを噴出させる管理人
そりゃまぁ、始終あの重厚なメイド服では廃熱もままならないのは確かだがこれはあんまりだ

あまりに恥ずかしいのか腕で前を隠しその場にへたり込んでいるティナ。普段は微笑を浮かべながらクラッカー達を惨殺しているとはその様相からは到底想像できない。

「あ、あの・・・・・・大丈夫?」
「こんな姿……マスターのお嫁にいけない〜!!」

いま、問題発言が聞こえたような気がしたが、さらりと受け流しミレイに相談する

「……ミレイ、コンセプトは分かるがもうちょっと何とかならないか?」
「そうか? 各機器の増設に継ぐ増設による廃熱を考慮するとこれくらいの露出は自然放熱に頼るなら必要だぞ。」
「う……」
「ふむ、お気に召さないか……ならばこういう物はどうだ? 服の内部に5インチ空冷Fanを取り付けた物があるのだが……」
「そういうまともな物があるなら先にだせっ!!」

管理人のつっこみがミレイに炸裂する。

かくして、夏仕様のメイド服には内部に5インチFanが搭載されることとなった。
 
 
 
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その66

空冷Fan内臓の服というのは実在します
あるいは宇宙船外作業服のように水冷パイプスーツを装着する案もあったのですが……

何方か開放型ティナのイラスト描いていただけませんかねぇ(笑)