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BSD物語

すったもんだの「紅葉狩り」の準備を終え、一夜が明けた
早朝5:00、当然のように外は真っ暗だ
窓の外からは雨音が聞こえていた
 

CH54:紅葉狩り(後編)
 

「あ〜あぁ、紅葉狩り中止かぁ」

荷物の最終チェックを玄関でしているとしょんぼりとした様子でメイルが2階から吹き抜けを降りてきた。普段は元気良く羽ばたいている羽も今日に限っては力なさそうだ。

「しょうがないでしょ、メイル。せっかくの予定でしたけど、この雨では……」
「そうですわ〜紅葉狩りの案内にも書いてあります、雨天中止、おやつは一人500円までです〜」

「あ、それなんだけどレイナ、もういっぺん読んでみてくれる? 小雨決行って書いてるはずだから」

「「「ええっ!?」」」

3人とも慌てて案内の冊子(手製)を開く。その1P(目次)の下の方には……
 
 

雨天中止(ただし小雨決行)

と、はっきり明記されていた。

その記述に喜んで飛び回る者1名、
何考えているんですか!ノートPCをぬらす気ですか!? と管理人に詰め寄った者が1名、あらあらどうしましょう、と持っていく荷物に追加のバスタオルとビニール袋を用意した者が1名。誰が誰かは言うまでもあるまい。

そして私は予め買っておいたレンズ付きフィルムカメラを取り出して胸ポケットに入れた

「今時フィルムで撮るカメラですか?」
「こういうときにしかとれない写真ってのもあるからね。」
「カメラのサイズでしたらデジカメでも同じくらいの物がありますが」
「個人的な問題でね、シャッター押した後にフィルムを巻き上げないと落ち着かないんだよ」

現状、既に銀塩とCCDによる表現はよほどこだわらない限り殆ど差はなくなってしまっている。それこそリバーサル云々とか言う人でない限りその差はわからないだろう。今回は撮影旅行に行くわけではなく、単にスナップ写真を撮るだけだし。加えて小雨の中で取るので水漏れによる故障も他所は考えておきたい。そう考えての選択だった。

「要は『デジカメが性に合わない』ってでだけですね」
「そんなことはないっ!」

でも、事実だったりする。

「それはともかく、ティナの方は換装すんだ?」
「ええ、荷物も全部耐水仕様にできました。ただ、レイナがお弁当がしけらないか心配していましたが」
「そっちはなんとかなるだろ。あと、今日の夕食はみんなで一緒に外で食べるから」
「どこかに予約を?」
「それは付いてのお楽しみ てことで」

7:30、最寄りの駅に到着。天気予報を確認すると昼前には雨は止むとのこと

「早めにでて正解だったか」
「雨が止んでから出発しても良かったのでは?」
「同じ様なこと考えて、他の観光客も昼前頃にやってくるよ。そうなるとむちゃくちゃ混むし」
「ほっっっっんとご主人様って人混みお嫌いですね」

近くの寺社仏閣を参拝、朝早いのと観光客が殆どいないため静かな境内を4人で景色を見て回る雨に僅かに濡れた紅葉が実に見事な色合いを出している。レンズ付きフィルムカメラでパチリ

「でも、とれたかどうか直ぐに確認できないのはちょっと惜しいですね〜」
「そればかりはデジカメに負けるよ」

こんな感じでデジカメ論議を交える。

11時ごろ、ようやくぱらついていた雨も上がる。
少し早いが近くの河川敷にビニールシートを広げて昼食にする

「あ! ボクのハムサンドとったぁ!!」
「そんなことしません! 大体まだ貴方のバスケットに残っているじゃないですか。言いがかりです」
「は〜、お茶がおいしい」
「お代わりいかがですか〜」

横での喧噪を余所に二人でほのぼのとレイナの作ったサンドイッチを紅茶と一緒に頂く
ティナとメイルのこの騒動はいつものことだし、周囲に影響がでるくらいになったら止めるか……幸いそこへ行くまでにティナが今度メイルに作ることで収まったらしい。雨も上がって暫くしたので少しづつ観光客が増え始めた。

「ご主人様、これからどこへ行きます?」
「駅前にオルゴール博物館があっただろ? 其処へ寄ってから今日の最終目的地へいくよ」
「オルゴール博物館ですか?」
「紅葉狩りとは一寸違うけど、一度見て置いても良いんじゃないかな?」

オルゴール博物館に展示されていた物は精緻きわまるメカニズムの集大成と言った物であった。オルゴールはその仕掛け上、ドラムに記載されたデータを再生することしかできない。そこへドラム交換機構を搭載したオルゴールが登場し、オルゴール文化は一気に華やかになる。しかし、その機構はオルゴール自体の価格をはねあげてしまったのだが……

「必ずしも高度で複雑な機構が良いとは限らない、ということでしょうか?」
「単純な物こそ長持ちする、って場合も有るからね」
「それだけ用途に応用が利く、ということですか?」
「他にも色々有るけれど……それもあるかな?」
「奥深いんですね……」

色々考えるところがあるのかオルゴールの前で推論を繰り返すティナ、演算に気を取られているのかスキンが半透明になり、周囲が僅かに帯電しはじめた。やばい、強制中止させないと!

「ティナ、ごめん!」
「きゃん!!」

ばしぃっ!!!!

「あいたたたた、やっぱりきたか」
何をやったかというと、ティナのしっぽを掴んだのだ。コレをやられると、OSネコミミメイド達はそれまでの処理を強制中断処理してしまうのだ。その代わり場合によっては今のようにバックファイアというか反動がくる今回は彼女の周囲に帯電していた分が一気に逆流してきたようだ。

「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ん〜、大丈夫、ちょっと痺れただけみたい」
手を開いたり握ったりしてみてる。少し力が入らないが痺れているだけのようだ。

「念のため、レイナに見てもらいますか?」
「ま、大丈夫でしょ。これから向かうところはそういうのに向いているところだし」
「そういえばどこへ向かうか聞いていませんでしたね。一体どこなんです?」
「料亭○之屋だよ」

「「「え〜!!!」」」

いつの間にか来ていたレイナとメイルまでもがティナと共に驚きの声を上げる。無理もない。○之屋といえばこの近辺でも有名な超高級旅館だ。

「一体何時そんなところに泊まる資金作ったんですか!?」
「泊まらないよ。そこで食事するだけだし」
「『ご休憩』ですか〜?」
「「ちがうでしょ!」」

思わずティナと管理人とでつっこみを入れる

「では、夕食だけですか?」
「それも招待されたんだ」
「一体何時そんなコネを」
「な・い・しょ」

そんな風におしゃべりしながら歩くことしばらく。
静かな佇まいの中、旅館○之屋に到着

「いらっしゃいませ〜」
「本日予約を入れていた○○だけど」
「はい、承っております」
「あと、料理長さんに私達が到着したと伝えてもらえますか? 多分、話せば分かると思います」
「かしこまりました」

「ご主人様、料理長に話が行っているって?」
「昔、家の両親が此処の料理長さんと仲が良かったらしくて、何度かごちそうになっているんだ。
今回もその縁なんだよ」
「そうだったのですか〜 てっきりマスターが何か脅しているのかと思いました〜」
「脅してどうする!」

そうして部屋に案内されていると暫くして温泉の案内状が目に留まった
あれ? 此処に温泉なんてあったっけ?

「あの? この辺に温泉なんてありましたっけ?」
「つい最近発見されたんです。正式なサービスは来年春からですが先行して入っていただけます」

お言葉に甘えて温泉へ。まだ仮運用と言うことで露天風呂ではなく普通の屋内施設。もちろん男女別だ。混浴? 覗きに行っても良いけどおそらく明日を迎えるのは無理だろう。とはいえ、向こうからなにやら騒がしいどたばたが聞こえる訳で……大丈夫なんだろうな?(^^ゞ

と思ったら、この旅館でも温泉施設としてのノウハウはまだまだで、外国人が来た場合の対応等はまだ検討中だったらしい。ティナ達のどたばた(詳しくは教えてくれなかった)は後に参考になったらしいどのように参考になったかは怖くて確認できなかったが……

お風呂から上がったところで待望の夕食タイム
コレがまたすさまじいとしか言いようのないフルコースだった。

諸般の都合により詳細は明記できないが、よくぞまぁこれだけの食材を集めたという代物のオンパレード思い出すだけでご飯が3杯は食えるという代物だった。正直に言う、フグ刺しなんてそうそう食える物じゃないがこのときばかりは堪能させてもらいました。そんなこんなでごちそうを堪能した後、家に向かったのだった。
なお、今回の食事代は全て料理長持ち。ちょっと人には言えないお話だった。

食事の後、料理長に有ってお礼を言い。料亭を後にした。
既に外は真っ暗。ここは盆地だけ有って日が暮れるのも早い。

夜になって晴れたのか空は満天の星星で覆い尽くされていたらしい。
なぜこんな表記かというと私の視力は相当落ちていて夜空を見上げても星を殆ど視認できないからだ

「ほら、ご主人様。オリオン座はわかりますよね?」

ティナが指さした先には有名な鼓型が星で形作られていた。

「またみんなでこうやって食べに来ましょうね」

管理人も星を見上げながら何時までも彼女たちと星を見上げられると良いなと思うのであった。
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その54

管理人:「あ〜やっちゃった」

ティナ:「ちょっと後半やっつけ気味でしたね」

管理人:「いつものことと言えばいつものことなんでkどね」

ティナ:「今後の課題点、ということです」

管理人:「しょうじんせにゃ」