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BSD物語

最寄りの駅から山を越えて3駅
文字通り目と鼻の先のその場所は日本でも有数の見事な紅葉で有名な場所だった
たまにはみんなで出かけようと言うことで日帰りで紅葉見学に出かけることにした
 

CH53:紅葉狩り(前編)
 

明日は紅葉狩りという晩、ティナ達はそれぞれの部屋でなにやらリュックに荷物を詰め、
紅葉狩りの準備をしていた。管理人はと言うと財布と外出中のサーバトラブルに備えて
緊急メンテナンス用のノートPC及び遠隔接続用の携帯電話、それを入れる鞄というように
大した準備をしていない。ノートPCのバッテリーは内臓で3時間は持つ。それだけ有れば
屋敷に十分戻れるだろう。どうせ日帰りだし、もし何か入り用でも近場のコンビニで十分用意
できるからだ。旅行の極意は出来るだけ身軽にすることに尽きる。

さて、他のメンバーはどうかな?
ちょっと気になって彼女たちの様子を見に行くことにした。

彼女たちに部屋へ向かうべく2階へと続く階段で竹製の熊手が階段の上をふよふよと飛んでいた
それは片手で使うモノで長さが30cmほど……それほど重いモノではない

「……メイル、その熊手は一体何に使うんだ?」

熊手を抱えてふよふよと飛んでいたのは案の定メイルだった。

「だって、紅葉狩りでしょ? コレで一気に集めようかと思って」

「あのなぁ、紅葉狩りってのは色ついたモミジを愛でる習慣のことなんだが……」

「え〜っ! ハンティングの事じゃなかんったんですか!?」

驚愕の声と共に床に重量物が落ちる音がし、振り返った。地下の武器庫からティナが両手で抱えてきて所で私の声を聞き、武器を玄関ホールでぶちまけたようだ。

「一体何を準備していたんだ……(汗)」

ティナが用意していたモノは、クロスボウにボーラ(重り付き捕獲綱)にショートランスにネットに……

「おいおい、山狩りに行く訳じゃないんだぞ」

「てっきりそういうモノかと思っていたんですが……ほら、あそこってサルも多いですし」

ティナ達が悪い訳じゃないんだが元々海の向こうの出身であるティナやメイル、レイナは時々
こういう勘違いをする。まぁ、それはそれで楽しいのだが……まてよ?レイナも何か勘違い
していないか??

気になった管理人はレイナの部屋を訪れる

「レイナ、明日の準備は出来ているかい?」

「ええ、ばっちりですわ〜」

「ちょっと見せてくれるかな?」

「はい、どうぞ〜」

部屋の中に入らせてもらい彼女の荷物を確認する

「……で、この漁用の投網とトライデントは一体何に使うのかな?」

「はい〜大物の「momiji」に備えた準備ですわ〜」

「ああもう! 紅葉狩りってのは紅葉観光なの! ハイキングの準備をすること、いいね!」

既に前日からへとへとになった管理人の目に、客間でお茶をすすっている少女が目に入った。美宇だ

「美宇、君の準備は?」

「……もうできている」

彼女が指さした先には小さな巾着があった。私と同じく必要最低限のモノだけ用意したのだろう

彼女はこの国出身だからそう勘違いというのは心配する必要がない。任せて置いて大丈夫だろう

後は……
 
 
 
 

もう一人、確認して置かなきゃ行けない人物? がいた

深夜、私は再度レイナの部屋を尋ねる。

コンコン

「誰だ?」

「私だ」

「はいってもいいぞ」

今度はノックも無しにそっと部屋の様子を伺う

室内では一人のWindowsメイドが狩猟用ライフルの手入れをしていた。一体いつの間に
この国用のライセンスを取得したんだ?

「この屋敷に来て直ぐだ」

「出来れば地の文につっこみを入れるのは辞めて欲しいな(汗)」

「明日はハンティングと聞いたのでな、万全を期して最終チェックをしていたところだ。
弾丸の抜き出しテストも終わった。」

「弾丸の抜き出しテストって?」

「10000発中9900発をテストして不発弾が一切無かった場合のみ残り100発を使うのだ」

一体何時そんなテストをしたんだという疑問もあったが、その前にきっちり誤解を解いておかないと

「ミレイ、紅葉狩りは単なる観光なんだ。別にグリズリーを相手にするわけじゃないんだ」

「……そうだったのか」

もしここで誤解を解いていなかったら?

背中に寒気を感じつつ、明日の早朝起床に備えてそうそうにベッドに入る管理人だった。
 

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その53

管理人:「BSD物語久しぶりの更新です」

ティナ:「初の前後編ですね」

管理人:「それにしてもみんな勘違いするとはなぁ」

ティナ:「しょうがないじゃないですか、私達みんな外国製なんですから」

管理人:「はてさて、このハイキングの顛末はどうなるのか? 期待しないで待っていてください」