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BSD物語

……?
客用の湯飲みが一つどこかへ行っている??
 
 

CH45:客用湯飲み
 
 

どこかへ言ってしまった客用湯飲みのことを聞くために側にいたレイナに聞いてみる。

「誰か客用の湯飲み使っている?」

「いえ、誰も使っていません。それに私たちは普段紅茶を飲んで居ますから、使うならティーセットですわ〜 マスターが使っているんじゃないですか?」

確かに、この家で日本茶を飲むのは基本的に管理人だけ。その本人に心当たりがないとなると? そう考え事をしながら二階に向かおうとした。ふとこの屋敷唯一の和室である客間を覗くと和服を着たおかっぱの小さい女の子がお茶を飲んでいた。

どこかへ行ったその客用湯飲みで。

「お客さんでしたか。これは失礼を」

「…………」

こちらを一瞥すると気にする風でもなく、お茶請けの煎餅を可愛いらしく食べていた。年の頃は12歳? 頭に着いているネコミミもあいまって日溜まりのネコっぽい雰囲気を醸し出していた。

「この屋敷の『管理人』で「Yen-Xing」と申します。何かあったら遠慮なく申し出てください」

「……美宇、美宇=I=TRON」

ぼそっとそういうと再びこちらを気にした風もなくお茶を飲み始めた。どうやら名乗ったらしい。じゃまするのも悪いと思い静かにその場を去った。
 
 

「ご主人様、お客さんですか?」

リビングのテーブルで日本茶を飲んでいると、ティナがやって来た。右手にティーポットとお茶菓子を乗せたお盆をもち、左手で扉を閉めると管理人の向こうに座った。どうやら一緒にお茶につきあうつもりらしい
 
「ティナやレイナが呼んだお客さんじゃないのか?」

「私たちでもないし、メイルは朝からデーモン達の集会に出かけています」

じゃあ、だれの客なんだ??

「…………内緒話はあまりよくない」

「「うわっ!」」

いつの間にか美宇がキッチンに来ていた。
扉は……開けられていない。第一最初から管理人は扉の方を向いていたから扉が開いたら直ぐに分かったはずだ。

「…………お代わり」

そういって差し出した湯飲みにティナはお茶葉を換え、入れ直す

「失礼ですが……私の家の誰かが貴方を呼びましたか?」

「…………誰にも呼ばれていない。居心地良さそうだから居候する」

とんでもない発言が二人の脳内に浸透する間に彼女はキッチンから出ていった。扉に手をふれずにそのまま通り抜けて……

「「妖怪!?」」

二人して顔を見合わせる。そんな二人にいつの間にか来ていたレイナが横から答えた

「いえ、私たちと同じネコミミOSですわ〜」
 

「そういえば「TRON」って名乗っていたなぁ……あ、だから和服なのか」

「TRON」という日本製のOSがある。UNIXやWindows系に比べると知名度は今ひとつだが、一般人がふれている頻度を考えるとWindows系より多いのではないだろうか? それほど人知れず普及しているOSなのだ。たとえば家電製品や高機能携帯のOSともなるとTRONの独壇場だ

「私たちと違って家電等にも組み込まれていますから。存在が精霊に近くなってしまったようですわね〜 噂に聞く『座敷童』ですわ〜」

何か違うぞ……レイナ
結局、客用湯飲みの一つはそのまま美宇専用と決定したのだった。

   ( 続く )

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あとがき代わりの駄文その45

管理人:「はっはっはっはっは」

庭で乾いた笑をあげる管理人、その後ろに音もなく忍び寄る影……

ミレイ:「次は私の出番じゃなかったのか?」(イングラムを管理人に突きつける)

管理人:「あきたけさんと対月さんの美宇ラフイラストにちょっと触発されちゃって(笑)」

ミレイ:「まぁいい。次に話を書かないとこうだからな?」

振り返りざまイングラムを撃つミレイ、その弾は過たず50m先の空き缶をはじき飛ばし、側にあったゴミ箱にその金属缶を放り込んだ

……真っ青になって管理人が逃げ出したのは言うまでもないだろう