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BSD物語

木立にはヒグラシがとまり、その声は夏の終わりをしらせている

台風が通り過ぎた後の風は既に涼しく、秋の訪れを教えてくれた

しかし、家の中で未だに夏真っ盛りなところもあるのだった。
 
 

CH42:増殖
 
 

「今日の夕ご飯な〜に?」

期待と一抹の不安とを込めつつティナに今夜のメニューを尋ねる

「その予想通りそうめんです」

「……また?」
 
 

事の始まりは、夏のはじめに親が送って来たそうめんが一箱だった。
箱の中身は20把、それがどうにか片づいたと思ったら今度は親戚からそうめんのプレゼント
今度のそうめんは40把……

さすがに嫌になる分量だった

にゅうめんにするという手も有るのだが、にゅうめんで1輪はかなりきつい
結果、大量のそれをかたづける為に、ひたすらそうめんを食べ続ける羽目になったのだった
連続3日でさすがに飽き、以後は隔日でそうめんということにしたのだったが……

薬味や付け合わせ・具をいくら工夫しても限界はある。既にそうめんを見るのも嫌になりつつあった

すでにそうめんを食べること2ヶ月、ようやく底が「文字通り」見えてきた

リビングのテーブルの上には涼しげなカラスの器になみなみと盛られたそうめんの山
付け合わせのさらにはキュウリ・トマト・錦糸卵・ハム・鶏ささみのゆでた物が控えていた

本来は涼しさと食感をそそるその組み合わせも今はただ、我々の前に立ちはだかる
大いなる壁であった。

一掬い、つゆにつけ口へ入れる

一掬い、つゆにつけ口へ入れる
 

一掬い、つゆにつけ口へ入れる
 
 
 

……

もはやこれまでか
覚悟を決めたそのとき、玄関のドアホンが来客をしらせた

「雉虎シナノの配送便で〜す」
そのドライバーが届けた物は……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

友人の奈良土産のそうめん一箱であった。
 

  ( 続く )
 

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あとがき代わりの駄文その42

管理人:「そうめんはもう嫌だ〜(涙)」