*ワガママな悪夢*
(キリリク50000)
【5】
自信満々に黎深が言った通り、見事2年連続で優勝を勝ち取った絳攸は、大会終了後、養い親から一癖も二癖もありそうな"同期"たちを紹介されて困惑の極みにいた。そして困惑状態のまま邵可邸に"お裾分け"に行かされ、そして今なぜか紅家の一室で養い親の"同期"たちの酒宴に同席させられていた。当然女装のままだ。
(ど、どうしておれこんなことに……。ていうかこのひとたちっていったい……)
黎深の"同期"ということは皆官吏なのだろうが、絳攸の目にはゴロツキや幽霊や仮面男に見える彼らが、国を担い政治を司るお偉い官吏様だとは到底思えなかった(もっとも、一目見て彼らが官吏だと分かる者はいないに違いない)。若くて綺麗で頭が良くおまけに大貴族である養い親とは違う世界の人に見える、と絳攸は第一印象で思っていた。
ただ一人を除いては。
「こんにちは、絳攸殿。今日はとてもきれいでしたよ。黎深がきみを自慢したくなるのもよく分かります」
そう言って微笑んでくれた悠舜に、絳攸も笑顔を返す。
「ありがとうございます、悠舜様」
(この人は普通でよかった)
大会会場で奇人の横に座っていた悠舜は、あまりに普通すぎて絳攸の視界には入っていなかったが、その普通さがかえって絳攸を安心させた。
このお饅頭美味しいですよ、と勧めてくれた悠舜に絳攸が礼を言ってそれを取ろうとした瞬間、背後から声が鋭い掛かった。
「絳攸、酒がないぞ!」
「あ、はい黎深様っ。注ぎますっ」
饅頭に伸ばしかけていた手を引っ込めると、絳攸は慌てて瓶子を取った。
こぼさないようにと真剣な表情で盃に酒を注いでいく絳攸を見つつ、悠舜はくすくすと笑う。
「おやおや、妬かれてしまいましたー。過保護なおとーさんを持つと絳攸殿は大変ですねぇ」
「っ、妙なことを言うな悠舜。私はただ単に酒がなくなっただけだ!」
そう言って酒をぐいっとあおった黎深は、また注げとばかりに絳攸に盃を差し出す。
「あ、俺もねぇや。おい小僧、俺にも酒注いでくれ」
「飛翔はダメだ!」
「なんだと? 祭で小僧の応援したら酒飲み放題っつったのお前だろ黎深」
「お前のことを小僧呼ばわりするヤツに注ぐ必要はないぞ、絳攸。飛翔、貴様は瓶ごと飲んでろ!」
「んだとコラ。男のガキを小僧っつってなーにが悪いんだよ!? ああ!? どんなにかわいかろーが男だろうが」
「貴様がどこのガキを小僧と呼ぼうが構わんが、私は、絳攸に、小僧呼ばわりしたのが気に食わんのだ!!」
「意味わかんねーよ!」
「寄るな酔っ払い! 絳攸、こんなゴロツキには近づくんじゃないぞ」
「は、はぁ……」
「誰がゴロツキだ! つーかお前も酔っ払いだろ黎深! 小僧、酒!!」
「やらんでいいぞ絳攸!!」
ギロッと養い親と"ゴロツキ"から睨まれた絳攸は、瓶子を手に困った顔を見せた。
【←4】 【6→】
【キリリクTOPへ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.