*ワガママな悪夢*
(キリリク50000)
【3】
「さて今年も待ちに待ったこの時間がやってまいりました! 豊穣祭名物、女装大会!!! まずは少年部門の開幕です!!」
そう大声で叫んだ司会の声に、周囲からわぁっという歓声が上がる。場内の盛り上がりは、分厚い緞帳越しであってもヒシヒシと感じられた。他の少年たちと共に舞台上に並んでいる絳攸は、幕が上がる瞬間を緊張しながら迎える。
(こ、ここまで来たからには、黎深様の望まれる通りに優勝しなくちゃ!)
恥ずかしさは極限だったが、健気にも絳攸はそう思っていた。そう思いつつ絳攸は、幕が上がると同時に客席にいるはずの養い親の姿を探した。
(えーと、黎深様、黎深様……、……あ、いらっしゃった!!!)
と思ったのも束の間、満面の笑みを浮かべた絳攸は一瞬にして凍り付いた。
(ていうか、アレなに!!??)
ピシリと絳攸の笑顔を凍りつかせたのは、他でもない、黎深の周囲にいる者たちだった。
いつにも増して鮮やかな紅の衣を纏った養い親は、いつものように優美な仕草で扇で口元を覆って微笑を浮かべていたが、その周りにいる者たちといったら!!!
ド派手な彩色の不気味仮面を被った男と、今にも自殺しそうに陰鬱そうな顔をした幽霊男に両脇を固められ、その後ろには酒瓶を抱いたガラの悪いゴロツキまで見える。
(れ、れれれ黎深様!!! なんであんなヤツらと一緒に!!! ――はっ、まさか、"紅家のご当主様ともあろう方がこんなところで何をなさっているのです? 街中に妙な噂を流されたくなかったら、俺達の言うこと聞いてもらいましょーか"とか言われて、あいつらに脅されているのでは!? だとしたら、あの笑顔はおれを心配させまいとしての精一杯の……!)
そう考えた絳攸は今すぐ舞台上から駆け出して行って黎深を助けたいと思ったが、駆け出そうとした瞬間、後ろのゴロツキが黎深の肩に手を掛けたのを見てどうにか踏みとどまった。
(っ、ゴロツキめ! 黎深様を人質に取るなんてなんと卑劣な! ――くっ、おれが今出て行ってもこんな衣だし……っ)
それ以前に子供(しかも貧弱)が大人に敵うはずもない。ここはグッと我慢して、大会が終わったら黎深様の異変を紅家の家人にさりげなく知らせよう、と絳攸は思った。
(そのためには早く大会を終わらせなくちゃ!! 絶対優勝するんだー!!)
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