*ワガママな悪夢*
(キリリク50000)


【2】

「明日は一日、ずっと大会用の衣装で過ごすように」
昨夜養い親からそう言われた絳攸は、これから起こるであろう出来事を想像して溜息をついた。彼は絶対、女装大会出場のほかにもよからぬことを考えているに違いない。
家人から女物の衣を着せられ、大会用の化粧を施されながら、絳攸は浮かない顔で考え込む。
(大会が終わってからも女装してなきゃいけないなんて……。黎深様はおれに一体何をさせようとなさってるんだろう……)
昨年は女装したまま黎深たちと共に邵可邸に行き、賞品である米俵を邵可に手渡す(実際には家人たちに運ばせたのだが)という無茶をさせられた。今年も優勝したらソレをやらされるのだろう。そして今年はその後、邸に帰った後でも何かさせられるに違いない。
幼いながら賢い絳攸は、養い親の不穏な空気を敏感に察知していた。だがしかし同時にとても純粋な彼には"養い親に逆らう"ということは思いもつかなかった。
(あんまり恥ずかしくないといいな……)
女装するだけでも恥ずかしいのに、それを人に見せるのはもっと恥ずかしく、ましてやそれを誉めそやされるのはとてつもなく恥ずかしかった。
(本当は優勝なんてしたくないけど……黎深様がしろっていうし……喜んでくださるし……)
終わりましたよ、どこからどう見ても良家のお嬢様ですよ、と言った家人に形ばかりの礼を言うと、絳攸はさらに溜息をひとつ落とした。

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