*季節を纏う、白*
(キリリク3553)


【6】

「ええと、これが工部行き、こっちは五監……、あれは刑部。これは戸部……」
通常よりも幾分早く沓磨きを切り上げた絳攸は、黎深に言われた通り府庫に向かった。府庫は、絳攸が宮城内で唯一(ほとんど)迷わずたどり着ける場所でもある。
午前は沓磨き、午後は各部署から嫌がらせのように寄せられる雑務をこなすのが絳攸の日課となっていた。
すでに定位置となった机案には、もう書翰が山と積まれていたが、絳攸は手早くそれらを片付け、各部署へと届けるべく仕分けを開始した。
量が半端でないとはいえ新進士にでもこなせるような雑務は(いくら嫌がらせでもさすがに益体ないものしか回されない)、家で黎深から回される仕事内容に比べれば、なんてことはなかった。
他の部署から新しい書翰が届く前に、これらを各部署へと届けるべく、絳攸は立ち上がった。
「楸瑛が来るまでには帰って来れるかな……」
国試で同期及第した藍楸瑛は、現在厩番を仰せつかっている。午後は府庫で共に雑務をこなすのがなぜだが当たり前のようになってきていた。
今はまだ昼前だから、早く戻ってこれれば一緒に昼食を摂れるだろう、とも思う。
幸い今日は晴れている。
よし、と気合を入れて、絳攸は府庫を出た。

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