*季節を纏う、白*
(キリリク3553)
【5】
黎深は友人の言葉に素直に頷いた。
「だから仮面を貸してくれ。ああ、ついでに衣もだ」
「…………は?」
「私が絳攸の手助けをするわけにはいかん。目立ちすぎるからな。だが、仮面を付けていれば誰だか分かるまい?」
「………………」
「仮面姿なら、絳攸も周りの人間も、誰も私だとは気づくまい。万一怪しまれたときには『黄奇人』だと言い張ればいいだけの話だ」
我ながらイイ案だ、と笑った友人に、奇人はくるりと背中を向けた。
「…………。私には仕事がある。帰れ」
「つれないなぁ。君がそんなに冷たい男だとは思わなかったよ。私の大事な養い子がどうなってもいいというのかね?」
こうなったら最終手段、とばかりに黎深は奇人の背後へと忍び寄る。
「……っ、何をする黎深!」
「絳攸のためだ。おとなしくしたまえ、鳳珠!」
「黎深っ! なにを……! あっ、貴様どこを触って!!! っ、くぅっ」
「相変わらず麗しいな、鳳珠。ふふ、君の弱点は分かっているんだ。――それ」
「あああっ…………」
――それから四半刻後、黄奇人の装束をつけた黎深は満足そうに頷いた。
「うんうん、これならバレるまい。あとは声だけ気をつければよいな」
対して黄尚書は怒りのためか羞恥のためか、ふるふると震えていた。彼は仕方なしに黎深の衣をまとっている。
「……っ、早く返せよ……」
「分かっているよ。ではまたね、鳳珠」
不気味な仮面を被り、ふふふふふ、と不気味に笑いながら室を出て行った黎深に、鳳珠は「私はそこまで不審人物ではない……」と呟いた。
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