*季節を纏う、白*
(キリリク3553)
【4】
「鳳珠!!」
ずかずかと室に入ってきた友人を見て、鳳珠と呼ばれた通称・黄奇人は仮面の下で顔をしかめた。
「――黎深、騒ぐなら別の場所でやってくれ。私は忙しいんだ」
「あいつら……! 許さん、許さん、許さん!!!!! 私の絳攸をさんざん馬鹿にしおって……!!!」
絳攸の前ではどうにか抑えていたが、黎深のはらわたの煮えくり具合といったらなかった。友人の言葉など聞こえなかったかのように、烈火のごとく怒り出す。愛用している扇は持ち主に八つ当たりされて、見るも無残に折られていた。
「拾い子だと!? 稚児だと!!?? ああ確かに絳攸は誰が見てもかわいい! これでもかというくらいかわいい!! 私の子なのだから当然だ!!! だがアレを私の慰み者のように言いおってえぇぇぇ!!!! 私は藍家の種馬どもとは違うわバカものぉぉぉっ!!!!!」
「お、落ち着け黎深。理由は分かった」
「何が分かっただ、鳳珠!! おのれぇぇ、絳攸をバカにした者ども全員呪い祟り降格にしてやる!!!」
「……黎深」
「今すぐ鄙びた地方へでも行くがいい!!!!」
「…………黎深」
「孫子の代まで出世は望めぬとーー、うっ」
ドカッ。
鳩尾にもろに気を食らって、さすがの黎深も瞬間息を止めた。奇人は気功の達人なのである。
「黎深。落ち着けと言っているのが聞こえないのか。お前がここでいくら騒いだとて、どうにもなるまい? さっさと吏部に戻って降格人事にでも着手した方がよっぽど有益だと思うが」
「そんなことで私の怒りが収まるかっ」
通常人なら失神ものの攻撃から即座に復活した黎深は、腹をさすりつつ言葉を続ける。
「午前中はアメアラレと降る嫌味を受けながら沓磨き。午後には各部署からの書翰集中砲火だ。魯官吏のなさることに意味がないとは思わないが、あそこまで酷いのは見てられん」
七家外での史上最年少状元及第、元は捨て子で紅黎深の養い子、おまけにあの整った容姿だ。どれを取っても朝廷では異質で、受け入れ難いだろうことは黎深も絳攸も承知していた。
だが、黎深が思っていたよりもおばかちゃんな官吏は多かった。少年状元をいびって愉しむ大人のなんと多いこと。
「だがお前が正面から手伝うわけにはいかんだろう?」
「そこなんだよ鳳珠」
さっきより幾分落ち着きを取り戻した黎深は、友人の言葉に素直に頷いた。
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