*君への道*
(キリリク56465)


【5】

しかしその足で黎深が向かったのは、吏部ではなかった。
先ほど辞去したばかりの室の扉を叩くと、返事を待って中に入る。
「霄太師」
「おや、紅尚書。忘れ物でもありましたかな」
黎深が室を出た時と同じ椅子に座っていた霄太師は、ずず、と茶をすすった。
それを横目に、黎深はあえて何でもないことのように告げる。
「先刻の話ですが、お受けしても構いませんよ」
「ほ。それはそれは……どういう風の吹きまわしじゃ?」
さすがの霄太師も驚きを隠しきれない表情で黎深に向き直った。
そんな老臣に向け、黎深はにっこりと笑う。
「ですが、いくつか条件があります。李絳攸はあくまで吏部侍郎のまま、ときおり主上に"お貸し"致しましょう。主上がこのまま政事をせぬのなら、すぐにでも私の元に戻します。そして万が一、主上が絳攸に手を出した場合、貴陽が再び焼け野が原になるとお思いください。それから――」
そうして黎深が出したいくつかの条件に、霄太師は甘い甘露茶を飲みつつ、渋々ながら頷いたのだった。

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