*君への道*
(キリリク56465)


【6】

「霄太師から要請があった。明日よりきみは主上付きになる」
「イヤです。他当たってください。私はあなたの部下なんですよ」
黎深が霄太師に呼び出された翌日、吏部尚書室でそう告げた途端、即座に食って掛かってきた養い子に、黎深は心の中でそっと微笑んだ。
だが、そうとは知られないよう、黎深は養い子をサクッと論破し、ピシリと言い放った。
「もちろんだとも。だが、そう私が決めたんだ。しっかりやってきたまえ」
「……………っ」
思いきり嫌そうな顔をした絳攸は、しかしそれ以上反論はしてこなかった。
嫌そうな顔をしつつ室を出て行こうとした絳攸に、黎深は声を掛ける。
「ああ絳攸」
「……まだなにか」
「バカ王はどうせ後宮に引きこもりで当分会えまい。きみもしばらく暇だろう。毎日饅頭を作って持ってきなさい」
「……は?」
「王の側近業が落ち着くまで、しばらくきみの分まで働いてやろうというのだ、この私が。そんなやさしくて素敵な上司に差し入れくらいするのが筋だろう」
「だったら侍郎として働いている方が断然マシです! 黎深様、やっぱり側近の話はお断りします!!」
「――絳攸。側近も、饅頭も、私が決めたことなんだ。嫌だなんて言えると思っているのか?」
「………………。わかりました。では失礼します……」
絳攸が室を出ていったのを確認して、黎深はぱちんと扇を閉じた。

自分か、王か。
もしどちらかを選ぶ日がきて、絳攸がどちらかを選んだのなら――。絳攸自身が考えた道であるのなら、どちらを選んでも構わない。選べる道は、用意した。
だが。
「ハナタレ小僧が、簡単に私に勝てると思うなよ」
そう呟いて、黎深は養い子の置いていった手作り煎餅饅頭を頬張った。

END.
【←5】
56465Hitの常盤様からのリク「絳攸が主上の側近にと要請を受けた時の話」でした〜。今後、次刊とかで本当の詳細が語られる可能性もありますが(汗)、現時点で、私なりに、「どうして黎深様は霄太師の要請を受けたのか」と考えて書いてみました。常盤様、リクありがとうございました!

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