*君への道*
(キリリク56465)
【4】
そんな弟を見て、邵可は微笑んだ。
霄太師の言葉に黎深が頷いても、断っても、それは今後の絳攸の進路を決めることにほかならない。手放すつもりはないと言いながら、いつかは手放さねばならないことも、邵可の弟はちゃんと知っている。
「私がとやかく言うことではないし、結局はきみと絳攸殿が結論を出すことだと思うけれどね。――主上は先王とは違うよ。私は、主上のお側にも信の置ける人物がいれば、と思うけれど」
「……兄上はハナタレを甘やかしすぎです」
「今は、私ぐらいしかいないからね」
ふふ、と笑いながら茶を飲む兄に、黎深はぶすくれた。
「私のことはちっとも構ってくださらないのに……」
「おや? 私はきみのこともこれ以上ないくらい甘やかしているつもりだけれど。執務時間中にふらっと来ては茶を飲んでいくきみを、結局は許容しているじゃないか。絳攸殿を呼んで、連れて帰ってもらってもいいのだよ?」
「…………くっ」
「分かったら早く吏部に戻って、私ではなく絳攸殿本人と話し合いなさい。……それとも本当にお迎えを呼ぶかい?」
「か…、帰ります……」
しゅんと項垂れた黎深は、府庫を出る前に邵可を振り返った。
「兄上」
「なんだい?」
「絳攸は、私に対するのと同じように、他者にも仕えるのでしょうか」
「――どうだろうね。でも、矜持も理想も高い絳攸殿があそこまで無条件に服従するのは、きみにだけだと思うよ」
その言葉を受けて室を出て行く黎深の瞳には、室に入ってきたときほどの迷いは見られなかった。
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