*お散歩日和*
(10万HIT企画その3)


【3】

紅家直営の果樹園に着いた黎深は、さっそく果樹園の管理をしているおじじと林檎栽培の担当者を呼んだ。
人の良いおじじは、唐突な訪問にもかかわらず、小さな客を温かく迎えてくれた。
「おじじ、今日はおじじに聞きたいことがあってきたのだ」
「このおじじにですか。それは光栄なことでございますね。どのようなことでしょう、黎深様」
「りんごは陽の光によって赤く色づくのだろう? 陽が当たらなかったらどうなる?」
「よくご存知ですね黎深様。ええそうですよ、りんごの赤はお日様の恵みなのです。お日様がたくさん当たれば当たるほど、赤く甘くおいしくなるのです。陽が当たらなかったら、あの深い赤色にはならず、甘さも十分にはならないでしょう」
質問をした黎深、そして小さな玖琅にも分かるよう、おじじはやさしく答えた。
それに黎深は頷く。
「なら、実の一部に陽を当てなくさせたらどうだ? 甘くはならないか?」
「一部にですか? はて……。この果樹園では、すべてのりんごに陽が当たっておいしくなるように、葉を落としたり実を回したりということは致しますが、その逆はしたことがございませんゆえ……」
「ではやってみろ」
思いがけない提案に、おじじも林檎担当者も目を丸くした。
「で、ですが黎深様、今ご説明差し上げたとおり……」
「陽が当たれば赤く、当たらねば色づかないのだろう? それなら、りんごの一部を墨で塗っておいたらどうなる? 収穫後に墨を落としたら、そこだけ白く残るのではないか? 陽をまったく当てないというわけではないのだから、それなりに甘くもなるだろう」
「そ、れは……、そうかもしれませんが……」
「やってみなければ分かるまい? ――譲葉、玖琅、りんごに絵を描きに行くぞ」
驚きに固まるおじじと林檎担当者の前で、筆を手にした黎深は意気揚々と林檎園へと向かった。

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