*お散歩日和*
(10万HIT企画その3)
【2】
朝晩は冷え込むようになったが、陽の出ている昼間はまだまだ暖かい。暖かいというよりも暑く、秋用の厚手の衣では少し汗ばむほどだった。
ポカポカ陽気のなか、パカパカとひづめの音を響かせて馬車は進んでいく。
「それで黎深、一体どこに行くの?」
「どこにいくですか、黎兄上!」
正面に座った2人から問われ、黎深は幼い顔の眉間に皺を刻んだ。
「…………なぜ玖琅がいる」
「玖琅も黎兄上と譲葉といっしょにおでかけするです!」
そう言った玖琅は、隣に座る譲葉と仲良く手を繋いでにこにこと笑っている。
それに黎深は皺の数をさらに増やした。
「私はお前に聞いたんじゃない。譲葉、なんでコレを連れてきた!?」
「なんでって、せっかくのお出かけだし。黎深が自分からどこか行こうなんて言うこと滅多にないじゃないか。それに、玖琅1人置いてくのかわいそうだし」
「かわいそうなのは私の方だ!」
「え。どこが?」
心底不思議そうな顔を浮かべた譲葉に、黎深は言葉に詰まった。
「…………っ、とにかく私が聞いてるのはなぜ玖琅を連れてきたかだ!」
「だって黎深が自発的に出かけたいなんて、どうせ邵可様絡みでしょう? おおかた邵可様に贈る品物でも買いに行くんだろうから、だったら玖琅も一緒でいいじゃないか」
「………………」
側付きの譲葉にすっかり目的を見透かされていて、黎深は今度こそ押し黙った。
黙ってしまった主を見て、やっぱり自分の思った通りだったと確証した譲葉はにんまりと笑って聞いた。
「で? どこに行くのさ?」
「……………………林檎園」
「え? 林檎園? まだりんごのなる時期じゃないのに、林檎園? この時期に行ったってまだ早いよ。第一りんごなら毎年果樹園のおじさんが採って送ってくれてるじゃないか」
「……うるさい。お前は黙って私に付いてくればいいんだ!」
側付きだろうっ、と黎深は小さな顔を隠すように扇を開くと、ぷいと横を向いた。
【←1】 【3→】
【キリリクTOPへ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.