*握った手*
(10万HIT企画その2)
【2】
楸瑛はにっこりと笑い、劉輝は瞳を潤ませて絳攸を見た。
「気にしなくていいよ。何と言っても、私たちは"腐れ縁"だからね? 私はどんな君とでも付き合うよ」
「目が覚めて本当によかったのだ! あのまま絳攸が目を覚まさなかったら、余は、余は……」
ぐすんと鼻をすすった劉輝は、潤んだ瞳をこすると笑ってみせた。
「元気になったらまた余を手伝ってほしいのだ!」
その微笑みに、絳攸もてらいのない笑顔を見せる。
「ああ、もちろんだ」
「お団子食べながら3人で頑張るのだ!」
「団子? そんなに団子が好きだったか? 肉まんじゃないのか」
「余は最近お団子が大好きになったのだ〜」
などと微笑ましい会話をかわして久々の再会を喜ぶ劉輝と絳攸の間に、楸瑛が割って入る。
「あー、ところで絳攸?」
「なんだ?」
「私はまだこちらの素敵な女性を紹介してもらってないのだけれど?」
こちら、と百合を示した楸瑛は、突然話を振られてきょとんとした百合に微笑みかけた。
「あなたのようなお美しい方は、一度お会いしたら忘れるはずはないのですが」
その台詞を聞いて、そういえば楸瑛は彩雲国一のタラシだったのだと思い出した絳攸は、烈火のごとく怒り出した。
「お前の頭は常にそれか! こンの常春頭! お前なんかに大事な百合さんを紹介できるか!!!!!!」
「ほほぅ、百合様とおっしゃるんだね。初めまして百合様、私は藍楸瑛と申します。以後お見知りおきを。……ところで、その、百合様は本当に絳攸の母君でいらっしゃるのですか?」
絳攸の母ということは、アノ紅黎深の奥方ということだ。紅黎深の奥方が務まるような人物とはどんなに豪快な女性かと思っていたが、まさかこんなに若くて綺麗な方だったとは。臈長けた面差しに凛とした気品が漂う絶世の美女で、絳攸が今まで自分に会わせなかったのも分かる気がする、と楸瑛は思った。
が、問われた百合はためらいなく頷いた。
「こちらこそ初めまして、楸瑛さん。絳攸からお噂はかねがね伺っております。うちの子がいつもお世話になっているようで、ありがとう。これからもよろしくね」
そう微笑んだ百合に、それを見ていた劉輝は首を傾げた。
楸瑛の言うとおり、確かに一度会ったら忘れないくらいの美人だとは思うが、自分はどこかで見たような気がする。
「百合殿……。どこかで……、お会いしたことはないか……?」
「主上まで! いいかっ、百合さんはもう黎深様の奥さんなんだ!! おまえたちがいくら横恋慕しようと無駄なんだっ! 黎深様から百合さんを奪おうとする輩は誰だろうと許さんっ!!!!!」
病み上がりにもかかわらずぎゃいぎゃいと怒る息子を後目に、百合はいとも優雅に微笑んだ。
「あらいやですわ主上。どなたかとお間違えではございませんこと? それともひょっとして前世でお会いしたのかもしれませんわね。うふふおほほ」
「そ、そうか……?」
なんだかあやしい。
そうは思ったが、確固たる証拠があるわけではない劉輝はそれ以上問い詰めたりはしなかった。"黎深の妻を口説いた"などという噂が黎深の耳にでも入ったら、自分は間違いなく抹殺されてしまう。
一方うふふおほほと笑った百合は少々強引に話題を変えた。"会ったことがある"どころか、"実はあなたの叔母です"などとは、口が裂けても言えないのだ。
「ああそうだわ。えーと、楸瑛さん?」
【←1】 【3→】
【キリリクTOPへ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.