*握った手*
(10万HIT企画その2)
【1】
「やるわよー!!」という声を響かせつつ、秀麗だけがズンズンと階段を上がっていく。
彼女についていけずに地下牢に取り残された者たちは笑顔を凍り付かせたまま、その音が遠ざかっていくのを聞いていた。
「たくましくなったわね、秀麗ちゃん……」
しばらくして、そう漏らした百合の一言に周囲の面々もようやくハッと我に返った。
絳攸は、牢の片隅でリオウを抱き起こしている百合を見る。長い間しゃべっていなかったせいか、それとも別の理由からか、その声は少々震えていた。
「……百合さん」
「久しぶりね、絳攸」
そう言って微笑みかけてくれた百合に、絳攸も笑顔を見せた。
紅州で多忙を極めているはずの彼女が、こんなところまで来てくれるなんて思ってもいなかったのに。
「わざわざ来てくださって、どうもありがとうございます」
「何言ってるの。息子の一大事だもの、当たり前でしょう。私こそ来るのが遅くなって……ううん、今まで側にいてあげられなくてごめんね」
もし自分がずっと貴陽に、夫と息子の側にいたのなら、こんな結果にはならなかったかもしれない。そう思いながら百合は告げた。
「でもよかったわ、目を覚ましてくれて。久しぶりに秀麗ちゃんにも会えたし。それに、いいお友達がいて幸せね、絳攸」
嬉しそうに百合に言われ、絳攸は改めて周囲を見回した。
絳攸の目に映った人物は”お友達”とは少々違う気がしたが、にこにこと笑った百合にそれを否定することはできなかった。
「楸瑛、主上。…………悪い。たくさん迷惑を掛けたな」
自分がたったひとりのことしか見ていなかったせいで、周囲にどれだけの迷惑をかけていたのか、今の絳攸には理解ができた。それでも、劉輝も楸瑛もずっと、何も言わずに絳攸が自分の視野の狭さに気付くのを待っていてくれたのだ。
絳攸は眠っている間ずっと握りしめていた、花菖蒲の彫られた佩玉を眺めた。
楸瑛はにっこりと笑い、劉輝は瞳を潤ませて絳攸を見た。
【2→】
【キリリクTOPへ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.