*白と黒のまほう*
(黎深・絳攸)


【3】

(こ、これはひょっとして、ウワサにきく……)
「何を泣いてる」
「な、ないてなどいません!」
「泣いてるだろう」
そう言って黎深は絳攸の顔をその手で包み込むと、目尻に触れる。
それだけの仕草で、絳攸の心はどくんと跳ねた。
(こ、ここここれがウワサに聞く恋の病!? こ、こここ恋なのか!!??)
そっと離れていった手を名残惜しい、と思ってしまった自分に、絳攸は思い切り首を横に振った。
(あ、あ、ありえないだろ俺!!!)
「ほれ、お前の涙だ」
指先にきらりと光る雫を見せつけて、黎深は微笑む。と、その雫をぺろりと舐めた。
(ひぃぃぃぃ〜〜!!!!!)
たったそれだけのことで、絳攸の身体はどくどくと反応した。絳攸はそんな自分を全否定したかったが、どう頑張ってもどきどきは一向に収まらなかった。
(おかしい!! おかしいぞ俺!!! よりにもよって、なんで黎深様に!!!!)
絳攸の葛藤を知ってか知らずか、黎深は席に着くと微笑んで告げた。
「まぁいい。体調が悪くないのなら朝餉にする。今日はバカどもの相手をたくさんせねばならんからな」
「……………………ハイ」
そうして、黎深にとっては愉快な時間が、絳攸にとっては大変に心臓に悪い時間が、小一時間ほど続くことになった。

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