*白と黒のまほう*
(黎深・絳攸)


【4】

「いかがでしたか、"もうぎゅーっとして"は」
「悪くない」
にっこりと笑う黎深の笑顔から、悠舜は彼の満足度を推し量ることができた。
"もうぎゅーっとして"は、悠舜の妻であり稀代の発明家でもある柴凜が開発した、牛の着ぐるみであった。これを着た者は、赤色を見ると興奮状態になるという。
紅の衣をまとった紅家当主様は、相手が赤い顔でぽーっとしていたり、あたふたと視線をそらすのを見て大層楽しんだに違いない。きっとその相手は、妻の百合か、養い子の絳攸だろう。どちらにしてもお気の毒に、と悠舜は思った。
「悪趣味ですねぇ……」
「何か言ったか?」
「いいえ何も」
にこにこと笑った悠舜は、件の衣が入った風呂敷包みを車椅子へとしまった。
ちなみにこの"もうぎゅーっとして"の貸出期間は最長1日・1回につき金100両ほど。犠牲になる者(おそらく絳攸)はかわいそうだが、これからかなりの額の副収入が見込めるに違いない。……もっとも、この衣の効果が着ている当人にバレなければの話なのだが。
「ゆ、悠舜、その、悠舜も"もうぎゅーっとして"を着てみたらどうだ?」
そう聞かれた悠舜は、数拍考えてから笑顔で首を横に振った。
「いやですよ」
「な、なぜだ!」
「私はぎゅーっと"してもらう"側では、嫌ですから。してもいいのなら考えますよ、黎深?」
「……は?」
首を傾げた黎深を、悠舜はしっしと追い払った。
「新年は何かと忙しいんじゃないんですか? さ、こんなところで油売ってないで早く帰りなさい」




数日後、絳攸から「禁断の恋のお悩み相談」を受けてしまった悠舜は、真実を話すべきか大変迷ったという。

END.
【←3】
えー、ネーミングに関してはノーコメントでお願いします(笑)

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