*うむがやすし*
(黎深・絳攸)
【3】
「れ、黎深様!!??」
なんと黎深は引き寄せた絳攸の手をペロリと舐めたのだ。
「な、ななななな……!!!!」
「油がはねたのだろう。赤くなっている。――ああ、ここも。こちらもか」
ペロ、ペロ、と絳攸の手の至る所を舐め出した黎深に、絳攸はただ瞳をまんまるに見開く。手を振り払うどころか、言葉も出ない。
あまりの衝撃で固まってしまった養い子の手をすっかり舐め尽くしてから、黎深はやっとその口唇を離した。かと思えば――
「ほれ、そちらの手も出せ」
と、もう片方の手も自らの元へと引き寄せる。
先から根元、指の間まで丹念に舐め上げられ、絳攸は思わず身体を震わせた。
「……っあ」
「ああ、ここは切れているな。包丁で切ったのか? 染みるか、絳攸」
言葉もなくただコクコクと真っ赤な顔で頷いた絳攸に、黎深はふふんと笑って更にその傷を舌先で突付く。
「っ、れ、れいしんさま!」
染みる傷の痛みと、背を駆け上がってくる得体の知れぬ感覚とに、絳攸は耐えきれず声を上げた。それに黎深は楽しそうに口元を緩める。
「なんだ」
「は、離してくださいっ」
「嫌だ」
「黎深様……」
「私は菜を作れと命じたのだ。ケガをしろとは言っていない。――これは私の命令に背いた罰だな」
そう言ってペロ、ペロ、となおも絳攸の指先を舐め続ける黎深に、絳攸は再び言葉に詰まった。
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