*少しでも ちょっとでも*
(絳攸・楸瑛・邵可)


【3】

二人が返事をするとゆっくりと扉が開かれる。
「お二人とも、今日も精が出ますね」
そこから現われたのはここ府庫の主・紅邵可だった。
「邵可様!!」
邵可を見るなり、絳攸の顔がぱっと輝く。
それに笑いかけて、邵可は盆を差し出した。そこには蒸篭と茶器が載っている。
「これ、今日も扉の外に置いてありましたよ」
「ありがとうございます、邵可様。ですが、一体誰がこんなことをしてくださっているのでしょう? 邵可様ではないのですよね」
「ええ、私ではありませんよ。きっとどなたか、陰ながらお二人を応援している方が置いていかれたのでしょう」
府庫の扉の前には、毎日いつのまにか夜食が置いてあった。最初は二人とも「毒入りか!?」といぶかしんだのだが、害はないと分かってからは、密かにその夜食を楽しみにするようになっていた。
「お、今日は肉まんだね。美味しそうだ。絳攸、君、どうする?」
算盤をはじく手を止めた楸瑛は、蒸篭のふたを開けるなりそれを手に取った。
筆を持っていた絳攸は、慌てて指についた墨を拭う。
「食べるに決まっているだろう! 俺の分まで食うなよ、楸瑛!」
そうしてハグハグと肉まんに噛り付いた少年二人を見遣って、邵可はくすりと笑った。二人ともまだまだ成長期で食べ盛りなのだ。
「ゆっくり食べないと喉に詰まりますよ、絳攸殿、藍進士」
目的の書物を探しながらそう言った邵可は、美味しそうに夜食をほおばる二人の前の机案をちらりと見遣る。
書翰の山はまだまだ高い。今日も徹夜になりそうだと、邵可は少々気の毒に思った。
と、ふと一番上に開かれていた料紙に目を留めた。
「おや、これは……」
「どうかされましたか、邵可様?」
その呟きに、いち早く肉まんを食べ終わった楸瑛が反応する。絳攸はその横で肉まんをくわえながら首を傾げた。
「ええ、少し……。この書は絳攸殿の筆ですね?」
「あ、はい……」

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