*父の日*
(絳攸・楸瑛・黎深・奇人・邵可)
【6】
「ああ、そうなのですか――……って、へ?」
「ほかならぬあなたが側にいてくれることが、あの子にとって何より嬉しいことだと思いますがね。あなたが自分のために、こうして心を砕いて贈り物を考えてくれたということだけで、いいと思いますよ。父親とはそういうものです」
私も秀麗が元気でいてくれるだけで嬉しい、と邵可は父の顔で笑った。
「ですが……」
「無理に形にせずとも良いと思いますよ。あの子は、購えるものなら何でも手に入れられますから。――でも、どうしてもというのなら、お饅頭でも作って持って行ってあげたらどうです?」
「………………」
沈黙してしまった絳攸に、邵可はそっと名前を呼ぶ。
「絳攸殿?」
「――分かりました。どうもありがとうございました、邵可様」
「いいえ。こちらこそ、これからもあの子をよろしく頼みますね」
2人が出ていった室で、邵可はちらりと背後を伺う。
「聞いていたかい、黎深? そういうことだから、君は早く邸に帰りなさい。――ああそれから、あまり藍将軍にイジワルするんじゃないよ。かわいそうに、ぐったりしてらしたよ」
楸瑛は絶えず背後から殺気を送られ続けたのだろう。通常人以上に気配を読める楸瑛に、それは酷というものである。口数が少なかったのはきっとそのためだ。
「……はい、兄上……」
「絳攸殿と一緒に、またおいで。今度は玄関からね。――黄尚書も、どうもありがとうございました。いつもうちの弟が面倒をお掛けしてすみません」
"うちの弟"に瞳を輝かせた黎深は、バヒュン、と超光速で自邸へと飛んで帰った。
【←5】 【7→】
【過去小説2】
【最新小説もくじ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.