*父の日*
(絳攸・楸瑛・黎深・奇人・邵可)
【4】
「…………う〜〜〜ん…………」
「――絳攸? 決まったかい?」
「いや……。どれもこれも、しっくりくるものがなくてな……」
店を回ること数軒。事前に絳攸が調べてきていた紅家御用達・有名専門店はすでに見終わってしまい、今2人は街で目に付いた店を見て回っていた。
「黎深様は大抵のものはお持ちだし、特に何かがほしいと仰っているのも聞いたことないしな……」
「でも、色々見て回っているうちにいいものがあるかもしれないよ」
「それはそうなんだが……」
紅家当主が欲して手に入らぬものなどほとんどない。そんな人物に贈り物をするのは、生半可な見立てでは駄目だ。
そう思えば思うほど、絳攸はドツボに嵌っていった。
「一体どんなものが良いのだろう……。黎深様に一番喜んで頂ける品とは……。――そうだ、邵可様ならご存知かも!」
「え、邵可様?」
「そうだ、なぜ今まで気付かなかったんだ! 邵可様のところに聞きにいこう!!」
それがいい、とばかりに急に元気になった絳攸に、さすがの楸瑛も顔を引きつらせた。
時刻は既に昼をだいぶ回り、もうすぐ夕方になろうかという頃だった。ちなみに朝から歩き通しである。尾行の気配も一向に消えることなく、色々な意味で(特に精神的に)楸瑛も少々参ってきていた。
「こ、絳攸、今からかい?」
「ああ! そうと決まれば、行くぞ楸瑛!!!」
「――絳攸、邵可様の邸は反対方向だよ……」
仕方がないな、と苦笑した楸瑛は、絳攸を案内して邵可邸へと歩き出した。
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