*父の日*
(絳攸・楸瑛・黎深・奇人・邵可)


【2】

翌日、地図を片手に街を散策する2人の姿があった。
「…………で、次はどこに行くんだい、絳攸?」
「次はとりあえず文房具屋だな。いい墨や硯があれば、どうかと思うんだが」
「ふぅん、いいんじゃないかな……」
「なんだ貴様その投げやりな態度はっ! 黎深様にお贈りするものを選びにいくんだぞっ。そんないい加減な気持ちで行くことは許さん!」
「……………………そう言われても」
楸瑛はただの付き添いであって私が選ぶのではないし、というかむしろ私は黎深殿から嫌われている気がするのだが……、と思っていたが、賢明な彼はそれを口に出すことはせず、背後をちらりと窺った。
この友人は贈り物選びに必死で気付いていないようだが、武人である楸瑛はしっかりと気付いていた。自分たちの後をつけている2つの影に。
(私はそんなに信用がないのかな……)
そう思いつつ、楸瑛は絳攸に言われるままについていく。
「よし、文房具屋はあっちだな」
「…………そう?」
絳攸の持った地図を横目で見た楸瑛は、それは逆だろうと思ったが、あえて異論は挟まなかった。
理由や目的はどうあれ、そのぶん長く2人きりでいられるのだ(背後からオマケもくっついてきたが)。それは楸瑛にとって嬉しいことであったから、今日の彼は大人しく絳攸に従っていた。
「どうした楸瑛、行くぞ?」
「ああ」
頷いた楸瑛は、微笑んで友人の横を歩き出した。

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