*千変万化*
(黎深・邵可)


【2】

「あ、あのっ、こうゆ……っ、ウチの養い子がっ」
「絳攸殿がどうしたの」
「及第しましたっ!!!!」
やはり、と邵可は思った。
弟の養い子である李絳攸が会試を受けたのは知っていたし、それならそろそろ結果が出る頃で、結果を知った弟は必ずや自分のところにくるだろう、と。
「そう、おめでとう。絳攸殿なら受かると思っていたよ」
「はい! ありがとうございます!!!」
満面の笑みを浮かべた黎深は、少し照れたように頭を下げた。
愛用している扇で表情を隠すこともせず、頬を染めて口を喜びの形に開いた弟の、その心底嬉しそうなその笑顔に邵可は少々驚いた。
彼は自分が及第した際には傲然と「当然の結果です」と言い放ち、「これで兄上のお側にいれます」と微笑んだに過ぎなかったのに、と邵可は回想する。
ずいぶんと変わったものだ、と邵可は弟の変化を喜んだ。
黎深が拾って李絳攸と名付けた少年は、まさしく天の配剤ともいうべき存在だったのだ。黎深に拾われなければ明日をも知れぬ浮浪児だった少年は、子を拾わねば解かり過ぎる明日を退屈なまま過ごしていた黎深に、良い影響を与えてくれた。
周囲から「氷の君」などと呼ばれ冷酷非情な能吏として名高い弟は、今は邵可の目の前で、その通り名が信じられないくらいに蕩けきった笑顔を浮かべている。
「じゃあ何かお祝いを考えないといけないね。何がいいかな」
「いえ、ちゃんともう決めてあります」
すぱっと即座に言い切った弟に、邵可は苦笑した。
「そうじゃなくてね。私からのお祝いだよ」
「えっ!? 兄上からのお祝い!? そんなの、絳攸にはもったいなさ過ぎます!!!!!」
私が欲しいです! と叫んだ黎深に、邵可は更に苦笑した。
「仕方のない子だね、黎深。分かった、君にも何か考えてあげよう」
「本当ですかっ!!」
「うん。だから、私からのお祝いを絳攸殿から取り上げたりしないようにね」
弟の考えなどお見通しの兄に、黎深は渋々ながら頷いた。
「はい……。あ、あの、それで兄上」
「ん?」
「わ、わ、私はどんな顔をして絳攸に会えばいいのでしょう……っ?」
「……………………え?」
急に思ってもみなかった相談をされ、邵可は珍しくも一瞬ほうけた。

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