*千変万化*
(黎深・邵可)


【1】

「兄上、兄上、兄上っ!!!!!」
「……紅官吏、騒々しいですよ」
ばたばたっ、バタン! とにぎやかに音を立てて室に入ってきた弟に、邵可は顔をしかめた。
「府庫では静かにしなさいといつも言っているでしょう。第一、ここにはあまり来るなと言ってあるはずですが?」
用がないなら帰りなさい、と最愛の兄から余所余所しくつれない言葉をもらっても、今日の黎深はまったくめげなかった。
「用ならあります!!!」
子供のように瞳を輝かせ期待に満ちた顔で自分を見つめてくる弟に、邵可は苦笑する。
「――仕方がない、来なさい」
「はいっ!!!」


奥の室へ入ると邵可は用意してあった茶器と饅頭を棚から出した。
――本当は、そろそろ黎深がここへ来るだろうということは予想していた。その様子からすると、結果も邵可の予想通りだろう。
そわそわと落ち着かないそぶりで室を動き回っている黎深に、邵可は声を掛けた。
「座りなさい、黎深。お茶が入ったよ」
「はっ、はいっ!!」
黎深はガタガタと椅子に座ると、茶には口を付けずに、前に座った兄をじぃっと見つめた。
やさしい邵可はそれに微笑むと、何か言いたげな弟を促してやる。
「それで、用というのは?」
「あ、あのっ、こうゆ……っ、ウチの養い子がっ」

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