*親の心子知らず*
(黎深・絳攸)
【3】
絳攸が徹夜で仕上げた健康診断草案は、黎深がその後すぐに手直しを入れ、その日の朝議で早速議題に上った。
「先日主上から提案された"健康診断"ですが、これはひとえに主上が私たち官吏のことを常に気にかけ、考えてくださっている証しだと感じ入りました。また官吏の健康は何よりも優先されるべき重大案件。そこで吏部では早速その具体案を作成致しました」
お手元の資料をご覧下さい、とにこやかに言い放った黎深に、提案者である劉輝は薄ら寒いものを感じつつも配布された資料を手に取る。
ちなみに、黎深の横には見るからに「自らの健康より仕事を優先させています」と書かれた顔をした絳攸が控えていた。
資料が行き届いたのを確認して、黎深は自信たっぷりに告げる。
「常日頃、机案にかじりついて仕事をしているだけで運動不足な文官も多いでしょう。せっかくの機会です。身長・体重・医学的検査だけではなく、同時に体力測定も実施することに致しました。それらの検査結果は勤務査定と合わせて、吏部にて次の除目の考査材料とさせていただきます」
にっこりと笑った紅吏部尚書に、周囲から声にならない悲鳴が上がった。
健康・体力ともに一定の基準を満たさぬ者は左遷もしくは退官、と告げられたようなものだからだ。あの吏部尚書なら容赦なくやるということを、その場にいる全員がよく知っていた。
「まぁ皆様、先日も"健康診断"については賛成されてらっしゃいましたし、何より主上じきじきのご提案ですから、いまさら反対なさる方はいらっしゃらないとは思いますが」
そうしてぐるりと朝議の場を見回した黎深は、いとも優雅に微笑んで告げた。
「――簡単な説明は以上です。よろしいですね、皆様」
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