*衣替え*
(黎深・絳攸・邵可)


【2】

「………………なんだ、お前は気付かないな」
「うわあっ、黎深様!!!」
唐突に頭上から降ってきた声に、絳攸は慌てて顔を上げた。
「どっから!! ていうか、室に入る時は戸を叩いてくださいといつもあれほど!!!」
心臓に悪いっ、と胸を押さえた養い子に、黎深はふんと鼻を鳴らした。
「兄上が、こっそり近づいてくる私の気配はすぐに分かると仰ったのだが……。――やはりお前は無理か」
「こっそり近づかれたら普通分かりませんよ!」
「ふむ……」
確かに兄上は少々普通ではないかもしれないが、と思いつつ、黎深はふと思い立って養い子に手を伸ばした。
「"重い衣"でも"こっそり"でもなく近づいたらどうなのだろう。絳攸の歩き方を真似て……」
「って黎深様、ブツブツ言いながら何してるんですか!! うわ、うわ! 黎深様! やめてください!!! れーしんさまっ!! こんなとこで!!!!!」
「うるさい。黙って剥かれろ」
黎深はシュルシュルと絳攸の帯を解くと、その衣を次々に剥いでいった。
突然のことで混乱状態の絳攸はどう抵抗したらいいのか分からず、あれよあれよという間に黎深の手によって裸にされていく。
黎深は一通り絳攸の衣を脱がし終わると、その身体に跨ったまま自らの衣を寛がせ始める。
「れ、黎深様!! 何なさってるんです!! ちょ、どいてください!!」
「どいたら逃げるだろう、お前」
「当たり前ですっ!!!! 俺の衣返してください!! っていうか、なんであなたまで脱いでるんですか〜!!!」
と、そこにゴンゴン!という音が響いた。
「何をぎゃーぎゃー騒いでるんです、李侍郎。入りますよ」
扉を叩いた覆面吏部官吏・楊修は、珍しくも言葉を失ってその場に立ち尽くした。
「………………………………」
が、そこは有能覆面官吏、即座に状況を判断するとくるりと踵を返す。
「…………お邪魔しました。ごゆっくり」
閉まった扉の向こうから、書翰は扉横に置いておきますよ、という声が響いた。
「………………い、ま、……絶対何か誤解、されました、よね……」
というより、尚書(半裸)に押し倒される侍郎(ほぼ全裸)、という構図を見て"そう思わない"方がおかしい。
だが当の黎深は動じることもなく、その手を止めもせずに言い放った。
「お前が騒ぐからだ」
「でもだって黎深様が!!!」
「騒ぐな。これ以上、また誰かに見られたいのか、んん? 私は構わんぞ。――お前の言う"誤解"を"誤解"でなくしても構わんのだが」
「………………くっ」
身体の抵抗を封じられ、口でも負かされた絳攸は、その後はおとなしく黎深にされるままになった。

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