*衣替え*
(黎深・絳攸・邵可)


【3】


四半刻後、自らの姿を鏡に映した黎深は満足そうに笑った。
「ふむ、懐かしいな。……少々きついのはまぁ仕方がないか」
「――すいませんね、小さくて」
衣を取り替えたいならそう最初から言ってくれればよかったのに、と絳攸は呟いたが、それはキレイさっぱり養い親から無視された。
「さて、行くか」
「え、黎深様、そんな格好でどちらへ行かれるんですか!?」
「兄上の元に決まっているだろう。この姿で私だと気づいて頂けるか試してみるのだ!」
「はぁ…………?」
うきうき笑顔で侍郎室を出ていった吏部侍郎姿の養い親を見送って、絳攸は首を傾げた。




■オマケ■
「面会謝絶、って、どこの医院かと思ったよ」
侍郎室の扉に張られた紙を無視して入ってきた藍楸瑛は、そこにいた友人の姿にくすくすと笑った。
「なるほどね。その姿じゃあ、他人には会えないよね」
「うるさい楸瑛! 俺だって好きでこんな格好してるんじゃない!! あの人がだなっ、無理矢理俺の衣と取り替えてったんだ!」
「はいはい。――でも、そう言う割にはきっちり着込んでいるじゃないか?」
「脱いだら裸だろうっ。裸で仕事なんかしてられるかっ!」
「……ま、そういうことにしておこうか?」
自分を拾ってくれた養い親を限りなく敬愛している絳攸にとって、その衣を纏っていることが嬉しくないはずがないのだ。しかも今まで自分が着ていた衣を、その人が着ている、というのも実は嬉しいことなのだろう。
「でも、そんな格好されてたんじゃ、さすがに口説けないなぁ……。黎深殿に見張られているみたいだ」
「? 何をブツブツ言っている、楸瑛」
「いや、何でもないよ絳攸。では私は主上のところに行くね。届ける書翰があれば預かるよ」

END.
【←2】
10月、ということで、「衣替え」。……いかがでしたでしょーか(笑)

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