*珀明の憂鬱*
(黎深・絳攸・珀明)


【7】

その光景に、珀明は固まった。
絳攸が長榻でうつ伏せた黎深に圧し掛かっている。
絳攸の左足にはぐるぐる巻きの包帯。
その両手は黎深の肩の上。
――もちろん二人ともきちんと衣を着ていた。乱れているところなどひとつもない。
入り口で突っ立ったままの珀明を見て絳攸は首を傾げた。
「どうした珀明。顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」
憧れの絳攸からそう問われて、我に返った珀明はブンブンと首を横に振った。
「いえ、いいえっ!! ――こ、絳攸様、つかぬことをお聞きしてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「ナニ、されてるんですか……? というか、ナニされてたんですか?」
「見て分からないか? 黎深様の肩をお揉みしているのだ。先ほど私も足と肩を揉んで頂いたのでな」
「揉、み……、ですか……。足と肩を……」
「ああ。普段使わない筋肉を使うせいか、ずいぶんと凝るんだ」
杖を突き始めて最初の数日はずっと筋肉痛だった、と笑った絳攸に、珀明も乾いた笑いを返した。

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